大町市に魅力を感じ、Iターン・Uターンして地域に根ざした仕事に従事されている
皆さんや、大町市の地域資源を活用した仕事を起業された皆さんを紹介します。

春は菜の花、秋はソバの花に彩られる中山高原に立つ農園カフェラビット
北アルプスの山脈を背景にヤギが悠々と草を食べている美麻の中山高原。標高900メートルならではの素晴らしい自然を感じられる場所で、春には黄色い菜の花が一面に咲き誇り、秋になればソバの白い花畑が広がる高原です。そんな美しい風景の中、なだらかな丘の上に農園カフェラビットが立っています。おいしい珈琲と地産地消にこだわったジビエ料理が味わえる小さなカフェで、シェフの児玉信子さんにお話を伺いました。
――農園カフェ ラビットを始めたきっかけはなんですか?
児玉さん 2007年にアメリカから日本へ帰国したとき、東京に帰ろうと思ったのですが、都会の人混みが嫌だったんですよね。そのときに両親が長野で山村留学を受け入れていたので、ここで何ができるかな、と考えて、やっぱり自分の好きな食に関わる仕事をしようと思ったんです。
でも、近くのスーパーマーケットや八百屋さんに並んでいたのは、季節感も元気も無い野菜ばかりでした。両親も市民農園で自ら野菜を作って、地元の食材で山村留学の子供たちを育てていたので、私もまず、自分が食べたい元気な野菜を作るところから始めたんです。
2008年に新行の古民家で完全予約制のレストランを始めて、そうやって作った野菜をメインにしたお料理を提供していたんです。畑をやっているうちにシカやイノシシ、サル、クマの鳥獣被害に遭い、自分の畑は自分で守らなければいけないと思って、狩猟免許を取りました。今の農園カフェラビットがある中山高原で営業を始めたのも、そのころです。
――当初からジビエ料理を考えていたわけではないんですね。
児玉さん 農園カフェラビットを始める少し前から美麻でもだんだんシカやイノシシが獲れるようになってきたんですが、軽トラの上でみんなでさばいて持ち帰っていたので、保存しようにも冷凍庫はすぐに一杯になってしまい、自家消費で食べ切れない分はもったいないけれど廃棄していました。でもこれではいけない、なんとか無駄にしないようにということで、2012年の7月に一部補助金を頂いて、狩猟肉の解体・加工施設として美麻ジビエ工房を立ち上げました。
ジビエ工房ができて、命を頂くことに対する考え方がどんどん変わってきたんです。一昨日も解体したんですが、食べない所は骨と皮と頭と内臓も腸くらい。ラビットをオープンしたのは2012年の4月だったので、本当にいいタイミングで、ラビットでジビエ料理を提供することができるようになりました。
――ラビットでこだわっていることはなんですか?
児玉さん 美麻は四季がはっきりしていて、冬が厳しいからこそ、雪の中で寒さに耐えた野菜は味が濃くてとっても元気なんです。4月ごろ、雪が融けて顔を出したチーマディラーパというイタリアの菜の花を、手でポキポキっと摘んで、ニンニクとオリーブオイルでさっとパスタにして食べると、すごくおいしいんですよ。元気な野菜を食べれば、私たちも絶対に元気になると思います。ラビットに来てくれた方には、野菜も素材の旬を味わってほしい。例えばキャベツやニンジンは雪の下に置いておくとおいしくなるし、トウモロコシやアスパラガスは採れたてがおいしいんです。
児玉さん 無理して美麻で2月、3月に芽出しをやろうとしても、やっぱり生きていく強さが足りないし、よそから買ってきた苗は最初のうちは元気なのですが、秋の遅くまで収穫することはできないんです。例えば6月ごろに種から育てたナスは、秋の遅くまでよく採れます。春になって南の池田町や松川村で苗の販売が始まると、気持ちはついつい焦ってしまうんですけどね (笑)。なるべく自然に逆らわないように植物を育てたいと思っています。
――ジビエについてのこだわりはどうでしょうか?
児玉さん 最近は化学調味料などで変に手を加えて、素材の本物の味が尊重されていないと思うんです。例えば鶏肉に牛肉の匂いを付けることもできてしまう。それは、安い、簡単、おいしいっていうことを消費者が求めた結果だけれど、作ってきた企業にも責任があると思います。そこで味覚障害というか、化学調味料に依存する食生活になってしまっている。そうじゃなくて、もっと素朴な味でおいしいものがあるということを、だれかが発信していかないと、本当に分からなくなっていってしまう。
先日、熊谷喜八シェフともお話したんですが、ジビエも別に焼き肉のたれなんていらないわけです。焼いて塩胡椒だけでシンプルに味わってもらうことで、ジビエの本物の味が伝わる。素材そのものを味わうことで、化学調味料に依存している現在の食の考え方を見直して、大地の恵みを感じてほしいです。
――ラビットにとって大町の地域資源の魅力はなんでしょうか?
児玉さん この自然が一番の地域資源だと思います。地元の良さを知らない方もいらっしゃるので、まずこの自然の素晴らしさを知ってほしいです。
――これからの、新たな取り組みがあれば教えてください。
児玉さん まずは大町を盛り上げていくために、市街や温泉郷の各店と連携して、塩の道お祭りご膳に参加します。そして、できるだけ地産地消にこだわっていこうと思っています。引き続き元気な野菜作りに挑戦して、ラビットで提供するワンプレートの中にできるだけ地元の食材を使って食べていただけるように頑張ります。
――最後に、市民の皆さんにメッセージをお願いします。
児玉さん 自然環境は私たちが大切にしないと維持できないので、当たり前に思える山の景色が当たり前ではないということや、お金では買えない価値だということを感じてもらいたいと思っています。春の菜の花、夏の新緑、秋のソバ、冬の銀世界と、四季折々に変化する中山高原の自然を感じながら、北アルプス山麓の地元食材を味わい、おいしい水で淹れた珈琲を飲みながら、ほっとする時間を農園カフェラビットで過ごしていただきたいです。
企業情報
- 名 称
- 農園カフェ ラビット
- 代表者
- 児玉 信子
- 創 業
- 2012年7月
- 郵便番号
- 〒398-0001
- 住 所
- 長野県大町市大町 8295-48 中山高原
- 電話番号
- 0261-85-2120
080-1065-1627(児玉) - ファックス
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- Eメール
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- ウェブサイト
- http://www.kanko-omachi.gr.jp/foods/2017/03/post-25.php
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