大町市に魅力を感じ、Iターン・Uターンして地域に根ざした仕事に従事されている
皆さんや、大町市の地域資源を活用した仕事を起業された皆さんを紹介します。

ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンの写真
庭園の中に建つ瀟洒な工場。右側の塔に登るとアルプスが良く見えます。

 1989年7月の会社設立以来、化粧品作りのテーマとして「植物の生命力と癒し」を掲げながら、自然環境への配慮など先進的な取り組みを続けるアルペンローゼ株式会社。北アルプスの天然水や無農薬栽培の花々を使った化粧品製造のほか、会社敷地内ではブランドコンセプトを生かした庭園「ラ・カスタナチュラルヒーリングガーデン」の運営もされています。庭園へ案内されると、美しい花々や草木に囲まれ、その植物の香りに包まれて、まるでファンタジーの世界にいるようです。

 今回は、この会社の庭園事業に関わる県外出身のお二人、江間良弘課長と、山下尚子さんにお話を伺いました。

――まずお二人が今の仕事に就かれたきっかけを教えてください。

江間良弘課長
江間良弘課長

江間さん 私は神奈川の川崎市出身なんですが、旅が好きで、今までに47都道府県すべてを回りました。その中でも長野県が一番暮らしやすそうで、特に子供を育てるには身近に土や自然がある所がいいなぁと思っていました。

 大学卒業後、長野に就職することも考えたのですが、当時はIターンという言葉もなく、地方への就職は難しい時代でした。結局東京で大手のデパートに就職したのですが、結婚した嫁さんも長野が大好きでして、初めて彼女と会ったのも、結婚式を挙げたのも長野だったんです。二人で老後は長野県で暮らせたらいいねと話していました。すると面白いもので、結婚して半年後に友人づてに長野県での仕事の話をもらい、「長野がオレを呼んでるぜ。」と家族で越してきました。(笑)

 アルペンローゼへは、その後園芸会社で働いていたときに、ガーデニングワークショップの営業で来ていたところをスカウトされまして、転職させてもらったんです。今はこちらで営業から経営まで多角的な仕事をしています。

――江間さんの長野への熱いお気持ち、うれしいですね。山下さんはどうやって今のお仕事をされるようになったんですか?

山下さんの写真
庭園の管理を担う山下さん

山下さん 私は大学にいるころに造園業のアルバイトをしていまして、そこで面白さに気付き、そのまま造園の会社に就職したんです。結婚してこちらに来た後も、松本で造園の会社に勤めていたのですが、子供が欲しいと思って一度仕事を辞め、自営で造園業をはじめました。子供も育ち手を離れてきたところにアルペンローゼの求人を見つけまして、今の仕事に就きました。

 幼い頃から家族に山に連れていってもらって癒されていたんですが、それ以外に地元で心なごむ場所といえば近所のちょっとした公園で、「こんな場所がつくれたらいいな」と学生時代から思っていたんですね。自分が植物からすごく癒される人間なので、それがそのまま今の仕事へ結びついている感じです。

――夢がそのままお仕事になったなんて、すてきですね。そんな夢のお仕事をする上でこだわりはありますか?

山下さん 植物を愛する気持ちとかそういうことってすごく大事で、仕事をしていても自分の思いが植物に反映されるのが解ります。高い知識や技術などを取得するのはすごく大切なことですが、根底にはやはり植物への愛情が必要で、それがあってこそ良い仕事ができるのだろうと感じています。

花盛りの春の大花壇の写真
花盛りの春の大花壇

 私は“庭を造る”、というのも好きだけれど、“庭を育てる”ことが好きなんですね。造園会社に勤めている時は仕事でお客様の庭を回りますが、一つの庭をずっと見守っていくことはほとんど無いんです。ここでは一つのお庭を、一年を通して細かいところまで管理させてもらうことができるので、本当に幸せなことだなと思います。

 世話をして空間を美しく見せる仕事はやりがいがあります。


――心持ちが育てる花に現れるというのは分かる気がします。他にも貴社やこの庭園ならではのこだわりなどありましたらお聞かせください。

江間さん 当社ではガーデンに植栽している植物のうち8割程度は、上原(わっぱら:市内の地区名)の自社農園で作っており、普通の農家や花屋さんで扱わないようなお花も多く扱っています。例えば花の中でも背が高く育つものは、根が張るのが早いためポットを入れ替える手間が多く、採算がなかなか合わないので、普通は作らないんです。

山下さんの写真
春のウォーターガーデン

山下さん ここではそういった普通の庭園でしたら切り捨ててしまうようなこともやっていまして、私にとってはその経験自体が宝です。お庭でもいろいろなことを試させてもらったり、勉強させてもらったりしながら、より良い空間をつくれるよう努力しています。お花以外にも池の水などは小まめに掃除して常にきれいな状態であるよう気を付けています。

江間さん 当社の化粧品やガーデンで使用している水は、北アルプスの雪どけ水です。地下約100mのところから汲み上げています。当社の化粧品のイメージを崩さないようにするために、池や小川の水はいつも美しく保っています。池も三週間に一度は水を抜いて高圧洗浄機ですべて丸洗いします。そんなガーデンはほかにたぶん無いと思いますね。

――美しく整えられた庭園は別世界を感じるほどでした。

ツルバラが絡むアーチの写真
初夏はバラの季節

江間さん 実はお庭からは周りの建物などが見えないようにすり鉢状に造ってあります。ただそれは逆に夏は熱がこもる原因になったりするところもあって、非常に管理が難しいところでもあるんですよ。

――お庭の美しさの裏にはお二人をはじめスタッフの方々の努力があるのですね。次はお二人がこちらでの暮らしで魅力を感じているところを教えて下さい。

江間さん そばが好きだったもので、そば屋はいろいろと行きましたねえ。あと温泉も好きなんですが、ここにいれば車で一時間で行ける範囲に何十箇所もの温泉があるじゃないですか。まさに言うことなしですね!

山下さん 買い物に出掛けても伸び伸びとできるところがすごく気に入っています。レストランへ行ってもそう。人口密度が全然違いますよね。

ベンチの写真
庭のところどころに置かれたベンチ

 大好きな美術館もたくさんありますし、芸術家も多い。文化的にも非常に恵まれていると思います。

 私は中学生のころから田舎に住みたいと思っていました。休みの日に家族旅行で山へ向かうと、とてもリフレッシュできたのを覚えています。26歳でこちらに移住してきたけれど、それまではずっと自然に飢えた状態でした。

――なるほど、お二人とも日々の暮らしを楽しんでいらっしゃるのですね。こちらでお仕事をする上で感じている地域の良さもありましたら、是非紹介してください。

江間さん 植物を育てるにはそれぞれの植物に最適な環境っていうのがあるんですけれど、大町だと寒暖の差が激しくて花の発色がとてもよく出るんですよね。同じ花でも東京で育てればこんなにきれいな色にはならない。

 空気もきれいですよね。こちらで暮らし始めてから一年ぐらいたったときの話なんですが、東京に行った時に駅で降りたら急に息苦しくなってしまって、30分ぐらいしたら治ったんですけれど、そのときは「もう俺東京に住めないのかな」と思いました。(笑)

山下さん 本当に仕事の間も快適さが全然違いますね。夏は特に熱帯夜も無いし、日差しは強いけれど、湿度が全く違って、からっとしていて気持ち良いです。

――今後行いたい取り組みや、より力を入れていきたいお仕事などありましたら教えてください。

ベンチの写真
咲き誇るエキナセア

江間さん 山下さん中心にスタッフに頑張ってもらい、さらにランクアップしたより良いガーデンを造ってもらおうと思っています。社会貢献と言えばオーバーかもしれませんが、ラ・カスタの商品を使っている方や興味がある方々に、アロマにも使われている花々などでもっと癒されていただきたいです。

 エキナセアという花は当社のシンボルフラワーであり、ラ・カスタブランドの化粧品に使っているんですが、完全無農薬で栽培しています。他のハーブについてもできる限り低農薬化していきたいですね。

山下さん 今年の春、化粧品の香りをイメージして、アロマガーデンという新しい庭を造ったんですが、他のエリアでも新しいことをやっていきたいですね。

 ウッドランドという名前のエリアでは、里山をイメージして広葉樹がメインに植えられています。そのエリアに大町の里山で育つ植物をたくさん加えて、都会から来ていただいたお客様にこの地域の自然の美しさを感じてもらえたらと思っています。またお庭の文化や情報も発信していきたいですね。

――最後に、市民の皆さんへメッセージをお願いします。

コンサートの写真
毎回好評のオータムコンサート

山下さん 信州の雄大な自然と、この庭園などの自然を生かした人工の場所、どちらも楽しめるということを町の魅力づくりに生かしていけたらいいと思います。とてもリッチなことですよね。都会では考えられないことです。ガーデン内には北アルプスを眺めることができるスポットがいくつかあり、都会から来たお客様に喜んでいただいています。

江間さん 地元の人たちから見たら何でもないことでも、都会の人から見ると「おおっ」と驚くようなことがあります。

 まだ東京に住んでいたころ、旅行先で道祖神を見ていましたら、多分地元のおじちゃんだと思うんですが「そんな石を見てどうするんだ?」と言われたことがありました。(笑)こっちはとても面白いと思っていても、その魅力に地元の方々は気づいていらっしゃらないこともある。わっぱらんどなんてそうですよね。都会の人にとっては、ツリーハウスがあったり、豊かな自然があったり、本当に面白い場所だと思います。

 大町にも埋もれている観光資源ってたくさんあると思います。それを発掘して生かしていくことができればいいですよね。

コニファーガーデンの写真
コニファーガーデンから塔を臨みます

企業情報

組織名
アルペンローゼ株式会社
代表者
代表取締役 高橋 彰
創業
平成13年7月
郵便番号
〒398-0004
住所
長野県大町市常盤9729-2
電話番号
0261-21-1611
ファックス
0261-21-1612
ウェブサイト
http://www.alpenrose.co.jp

ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン

アルペンローゼ株式会社

 
ハーブソーダの写真
暑いときには冷たい飲み物を。
製品イメージ写真
工場には体験スペースもあります。
ショップ店内写真
ショップにはおしゃれな雑貨も。

次回は「キハダ飴本舗」を紹介します。

関連リンク

○ながの創業サポートオフィス(長野県中小企業振興センター)

○信州人キャリアナビ(長野県商工労働部労働雇用課)

○中小企業相談所ホームページ(大町商工会議所)

○定住促進ホームページ(大町市役所)