大町市に魅力を感じ、Iターン・Uターンして地域に根ざした仕事に従事されている
皆さんや、大町市の地域資源を活用した仕事を起業された皆さんを紹介します。

三蔵杜氏の写真
毎年9月上旬に行われる三蔵呑み歩き

 信州大町の三軒の酒蔵の杜氏さんは、いずれも他県出身の若手の皆さんです。今回は、前回に引き続き、その三蔵の杜氏さんたち(市野屋商店の村山大蔵さん、薄井商店の松浦宏行さん、北安醸造の山崎義幸さん)にお話を伺いました。

前回は、

  • なぜ大町に来たのか、なぜ杜氏になったのか
  • 酒造りの上でこだわっていることについて
  • 酒造りから見た大町の魅力
  • をお話いただきました。

    ――それでは次に大町での生活について、少し伺います。松浦さんのお嫁さんは、町中のお店のスタッフの方ですよね。みなさん、奥さんはこちらの方ですか?

    山崎杜氏写真
    登山やマラソンが趣味だという
    北安醸造(北安大國)の山崎さん(中央)

    村山さん はい、ここに来てから。

    山崎さん 現地化しています。

    ――みなさん、冬は泊り込みでお仕事ですが、家族の元に帰れないのは寂しいですね。

    村山さん 半年帰らないと居場所がないです。奥さんと子供だけの世界ができあがってる。夏の間は農業やっているので、家にいますよ。ひと夏だけ川上村に出稼ぎに行ったけど、それもよかったなあ。

    山崎さん 家は子供はまだいないし、同居なので、家を空けていても心配ないです。嫁さんも実家にいるわけだから楽しくやっていますし。これが男の実家だったら、嫁としゅうとめで大変なこともあるのかもしれませんね。(笑)

    ――なるほど、奥さんの実家がこちらだと、家を空けるにも安心な面がありますね。大町暮らしはいかがですか。

    松浦杜氏写真
    酒米の育成状況を調査する
    薄井商店(白馬錦)の松浦さん(左)

    松浦さん いいところですよね。山はきれいだし。

    村山さん 土地が安いから、借りても安くて助かります。物価も安い。

    山崎さん 村山さんは今はどのくらい田を借りて農業をやってるんでしたっけ?

    村山さん 以前は借りられる田んぼを探すのは大変だったけれど、ここ数年話をしてきた人に逆に頼まれて、倍増しました。今は6町歩くらいやっています。

    松浦さん それは大変ですね。

    村山さん それほどでもないですよ。機械にもよります。機械は少しずつそろえていますが、高い買い物なので、どのくらいの機械でどのくらいの規模たるかのバランスが大事なんじゃないかな。

    山崎さん ウチもやった方がいいかな、やろうかなと思っていて。蔵人さんは、今、季節雇用で冬だけですが、本当は夏の仕事もあればと思います。「やりたい人は農業もできる、そういうチャンスがあるところ」というのは、大町の強みにもなりますよね。

    村山さん なかなかもうからないけれどね。

    松浦さん 夏は農業、冬は酒蔵ですね?(笑)スキー場もありますし。

    ――話は変わりますが、どんな層のお客さまがお酒を買われるのでしょう? 昨年は方々でNHK連続テレビ小説おひさまの効果が出ていましたが、お酒にもありましたか?

    山崎さん 中高年や登山のお客さんが多いかなあ。

    村山さん おひさま効果はまあまあです。銘柄酒などは、「おひさま」のロゴなどを入れるだけでお金が掛かるので造りませんでしたが、人がたくさん来れば、それだけお酒の販売量も増えますから。

    ――なるほど、三蔵が連携して、大町ブランドを発信し人を集めることは効果的なわけですね。まさにそうしたイベントとして、「北アルプス三蔵呑み歩き」があり、年々大きくなっていますね。

    村山杜氏写真
    麹を広げる市野屋商店(金蘭黒部)の
    村山さん

    山崎さん そうですね、大町のお酒を宣伝するにはいいイベントになっていると思います。反面、毎年新しいお酒を出さなくちゃいけないから、大変ですよ。

    村山さん 毎年同じだったら飽きるしね。

    松浦さん イベント限定のお酒を造ったりもしますよ。

    村山さん 来年はちょこを持って参加する側に回りたいなあ。

    山崎さん 作り手は、ああいう機会にこそ、ちゃんと回って研究もしなくちゃね。諏訪の呑み歩きでも、真澄さんのところなんかは杜氏は回っているそうです。

    松浦さん 祭りとか、ほかのイベントでも取り組めればとは思いますが、なかなか手が回りませんね。搗精(とうせい)工場もあるし、もっと日本酒の町としてPRできればいいんですが。

    ――搗精工場は工場見学もできるので、お酒を知ってもらうにはいい施設ですね。

    山崎さん 元は大町にも伊那にも佐久にも、各地域に小さい搗精工場があったそうですが、今は県内唯一ですからね。

    搗精工場の写真
    銀色のカマボコ型の巨大な建物が搗精工場

    松浦さん あそこには、30俵単位で精米できる機械が30台あり、品種ごとに精米することができます。契約栽培米も持ち込んでいますよ。30俵1,800kgを精米するのに、だいたい50時間かかります。大吟醸では、1,800kgの米も精米後は750kg程度になってしまうんですよ。

    山崎さん そうしてみると、たくさんの米粉だよね。せんべいの材料になっているみたいだけど、もっと地元で使えないかなあ。外側のぬかは漬物に使えるけれど、米粉はパンにするような粉じゃないしなあ。

    村山さん 契約栽培の米だから、品質は確かだよ。酒と併せて売り出していけば面白いかもしれない。

    ――お水、お米、お酒のおいしい町として発信していきたいですね。お酒にするためのお米をついた後の米粉で特産品を作れたら、物語が膨らみます。それでは、最後に、市民の皆さんにお伝えしたいことなどありますか?

    山崎さん そうですね、酒造りとは直接関係ないですが、地元の物を食べてもらいたいなあ。

    村山さん 学校の給食では、小谷は地元の食材の割合がとても多いそうです。大町ももっと頑張ってもらいたいと思います。

    松浦さん 給食もそうですし、家の食事もですよね。

    ――お酒の話題ではなくて、驚きました。おいしい酒造りにこだわっていらっしゃる皆さんだからこそ、食へのこだわりもあるのですね。

    村山さん 食べることは大事だからね。

    山崎さん 地元産の安全でおいしい食べ物が、安く手に入るということも、大町の大きな魅力だと思いますよ。

     (完)

    金蘭黒部の写真
    キレ良くスッキリのやや辛口

    企業情報

    会社名
    市野屋商店
    代表者
    社長 福島 敏雄
    創業
    慶応元年(西暦1865年)
    郵便番号
    〒398-0002
    住所
    長野県大町市大町2527番地イ号
    電話番号
    0261-22-0010
    ファックス
    0261-22-0006
    お電話またはファックスで
    ウェブサイト
    http://www.ichinoya.com/
    白馬錦の写真
    甘辛のバランスの良い味わい

    企業情報

    会社名
    株式会社 薄井商店
    代表者
    社長 薄井 朋介
    創業
    明治39年(西暦1906年)
    郵便番号
    〒398-0002
    住所
    長野県大町市大町2512-1
    電話番号
    0261-22-0007
    ファックス
    0261-23-2070
    ホームページのお問合せフォームにて
    ウェブサイト
    http://www.hakubanishiki.co.jp/
    大國生原酒の写真
    お米本来のおいしさが際立つ甘口

    企業情報

    会社名
    北安醸造株式会社
    代表者
    社長 伊藤 敬一郎
    創業
    大正12年(西暦1923年)
    郵便番号
    〒398-0002
    住所
    長野県大町市大町2340-1
    電話番号
    0261-22-0214
    ファックス
    0261-23-4834
    hokuan@dhk.janis.or.jp
    ウェブサイト
    http://www.dhk.janis.or.jp/%7ehokuan/

    市内の日本酒関連施設マップ

    日本酒に縁の地

    アルプス搗精工場内部の写真
    アルプス搗精工場内部の様子
    電話:0261-22-5251
    酒の博物館の外観写真
    酒の博物館には県内の全銘柄を含む日本全国の日本酒が並ぶ
    いーずら大町特産館の外観写真
    三蔵のお酒がまっ先に並ぶ
    いーずら大町特産館

    次回は、コンディトライ・アン・マリーレの間橋杏さんのお話を紹介します。