大町市の地域資源を活用したコミュニティビジネスを紹介します。

凍りもち作り最盛期を迎えた農産物直売所かたくり内の作業所
凍りもちは、大町市の真冬の寒さを利用してもちを冷凍乾燥させた伝統的な保存食です。昔から農作業中のおやつや滋養食として親しまれてきました。この凍りもちの製造販売を手掛ける直売所かたくり凍りもち部会の皆さんにお話を伺いました。
――「凍りもち」の製造を始めたきっかけを教えてください。
曽根原さん 直売所ができたのは平成7年の春でした。もち米の消費拡大のため、昔はどの家でも作っていた凍りもちを作ろうということになったのです。
農産物直売所「かたくり」は常盤地区有志の農家が出資金を出して作った独立した組織です。こうした運営形態の直売所は珍しいと思います。
――凍りもちについて教えてください。
横山さん おもちを短冊に切って水に浸けて、氷点下の夜に引き揚げて、冷風にさらして凍らせ、そのまま春先までつり下げて乾燥させます。こんな風にパックにして販売しています。北アルプス山麓ブランドにも認定されているんですよ。
生のままでサクサクと食べられ、簡単に調理することもできます。栄養があって、消化も良いので、赤ちゃんの離乳食やお年寄りの介護食にも向いています。お湯を注げば「おかゆ」になり、水を含ませてレンジで温めれば「おもち」に戻ります。乾物ですので軽くて長期保存も可能です。登山をする人の携行食や災害時の非常食、支援物資にも最適です。実際、東日本大震災の際には被災地に送ったんですよ。
横澤さん うちの娘も離乳食には凍りもちを使ったんですが、すごく良かったです。喜んで食べてくれたし、腹持ちがいいから、寝たらぐっすりで、お昼寝の途中でぐずることが一度もありませんでした。
――そんなにすごい食材だったんですね。
遠藤さん そうですよ、知らなかったんですか! 凍りもちの芯までサクサクにするには技術が要るんです。この全部がサクサクってのが私たちのところの自慢なんです。添加物を使用しない昔ながらの作り方でおいしい凍りもちを作ることにこだわっています。
ここの凍りもちは、普通の白い凍りもちのほかに、ヨモギ入りとシソ入りの3種類があります。店頭売りするほかにも予約が結構あるんです。凍りもちの元祖としては、品質は譲れない点ですね。
せっかくだから食べてみましょう。ちょうど、あんこが冷蔵庫にあるから。
(と言って、その場で水に5分ほど浸け、水から揚げてバラバラに砕き、それをレンジで2分程度温めたものを、はしでざっとかき混ぜて、あっと言う間におもちにしてしまいました。あんこをくるむと大福の出来上がりです。)
――いやー、おいしいですね。普通のおもちと変わらない。歯ごたえは軽い感じがします。
遠藤さん そうでしょう。このおもちね、3日くらいは冷めても堅くならないですよ。不思議でしょう。きな粉を着けたり、いちご大福にしてもおいしいですよ。ほら、調理しないのも食べてみて。一遍に食べると、口の中パサパサしてむせちゃうから、少しずつゆっくり、唾液で溶かしながら食べてくださいね。
――大町市の地域資源の魅力はなんでしょうか?
曽根原さん まず、おいしいお水、そのお水がもたらす品質の良いお米。そしてアルプスから吹き下ろす寒風。原材料と環境がそろっていることがありがたいですね。凍りもちは温度が大事。水から揚げる時に氷点下にならないといけないのです。日中にはそれが溶けて、乾いた風が水分を飛ばしてくれなと駄目なの。製造に適した場所は、この辺りだけなんです。もち米は常盤産の契約栽培の「もちひかり」です。作る人も地元の私たち。全部が集まっているというのは恵まれていますね。
――今後の事業展開を教えてください。
東さん この伝統食を後世にしっかりと伝えていきたいです。幸いに最近では凍りもち部会には若い方が入ってくれて、随分と若返りました。ただ、かたくり全体でみると高齢化は深刻で、農産物の出し手も少なくなっています。加工部として多くのイベントに出店して直売所かたくりの発展に尽くしたいと思っています。
また、凍りもちが一般の人にもっと広まってくれればいいですね。私たちも自分たちでパンフレットを作ったので、それらを活用して広報していきたいと考えています。
――最後に、市民の皆さんに伝えたいことをお聞かせください。
曽根原さん 凍りもちは、先人たちの知恵が詰まった郷土食で伝統食。お年寄りが覚えていてくれたおかげで、こうして作ることができています。つながっているというのは大切なことです。地域に残る良いものは、これからもずっと伝えていってほしいですね。それには普段の食卓に載ることが一番。ビザや大福などのレシピも用意しています。多くの皆さんにおいしさを知っていただきたいです。
企業情報
- 会社名
- 農産物直売所「かたくり」
凍りもち部会 - 代表者
- 代表 曽根原 叶子
- 創業
- 1996年1月
- 郵便番号
- 〒398-0004
- 住所
- 大町市常盤9602
- 電話番号
- 0261-22-8839
- ファックス
- 0261-23-3719
次回は「社農産物直売所」を予定しています!
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