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ホーム リオデジャネイロオリンピック応援記 その2(平成28年9月)

リオデジャネイロオリンピック応援記 その2(平成28年9月)

大きな注目を浴びた準々決勝の激戦

準々決勝は、翌16日、対戦相手は同じく勝ち上がってきた山口茜選手。現地で応援する私たちにとっても、また大町で必死に応援してくれる多くの市民の皆さんにとっても、手に汗握る必死の試合になりました。ましてや、希望さん本人にとっては、たぶん生涯に残る対戦の一つになったのではないでしょうか。希望さんご自身が掲げた、メダルをという目標達成のためには越えなくてならない関門で、日本選手同士の戦いとなった準々決勝でした。

オリンピック会場を周回するシャトルバス(BRT)の車中で(背中にしっかり背負うリュックサック)

■オリンピック会場を周回するシャトルバス(brt)の車中で(背中にしっかり背負うリュックサック)

決勝トーナメントの組合せでは、ともに2人が1回戦を勝ち進むと次の試合で対戦することになると分かっていただけに、非情な組合せでした。女子シングルスでは、国別に出場枠が割り振られるのではなく、世界ランキングの上位者38人のみに出場権が認められる(各国2人が上限)のですから、何ともしようがありません。そして、組合せの上で、同じ国の選手同士が対戦することに何の配慮もないとのこと。前回ロンドンオリンピックの時の予選で、決勝トーナメントでの組合せを有利にするために無気力試合があったため、リーグ戦の抽選からランダムになるようルールが設けられたと知りました。

さて、試合が始まります。希望さんは、いつものようにコートに入る前のルーティーン、深々とお辞儀をして、何かつぶやいています。後で聞いたことですが、今日もこの舞台で試合ができることに多くの人に感謝する言葉を言っているのだそうです。これは両膝の怪我の治療のため復帰さえ見えない期間を経験して、昨年春のヨネックスオープンでようやく国際試合に復帰でき、見事な優勝を果たした際に考えたことで、これ以後、コートに入る前の習慣にしているとのこと。試合後、テレビのインタビューなどでも話していましたが、怪我をして悩み苦しんだ時の、ご家族や先生、仲間の心からの応援を決して忘れない希望さんの思いを聞き、私の胸にはこみ上げてくるものがありました。

バドミントン競技会場へのエントランスのモニュメント(リオ大会のロゴマーク)

■バドミントン競技会場へのエントランスのモニュメント(リオ大会のロゴマーク)

午後8時16分、いよいよベスト4への進出をかけて試合が始まりました。
これまで7戦して希望さんに一度も勝ったことがないという山口さんは、試合開始から積極的に仕掛け、希望さんに反撃の隙を与えず圧倒したまま、第1ゲームを21-11のダブルスコアで奪いました。国際大会で山口さんがゲームを奪ったのは初めてのことで、目を見張るほどの、ものすごいパワーでした。私は応援中いつも脇にノートを置き、できるだけ克明にメモを取っていたのですが、この第1ゲームばかりは、そうした気持の余裕さえなく、ノートには「ずっと、押されっ放し」、15-9、19-10、21-11と、飛び飛びに得点経過が書き込んであるだけでした。

常時書き続けた観戦メモと渡航メモ

■常時書き続けた観戦メモと渡航メモ

2人は、今までも国際大会などで先輩後輩として仲良くしてきた選手同士であり、お互いの長所も認め合っている仲間です。しかも選手村でも同室でベッドを並べているということもあって、私は、普段冷静な希望さんでも、いつもと勝手が違うのかな、やりにくいことがあるのかな、と思いました。また、希望さんが、天才と高く評価している山口さんが力に任せ、がむしゃらに向かってくる戦いぶりに、内心、何か「戸惑い」のようなものを感じているのではないかとも思いました。

観戦メモの1ページ(8/16準々決勝での山口茜選手との激闘、第2・第3ゲームの経過)

それでも私は、希望さんが負けることは決してないと思っていました。これまで、フェアプレーの精神に徹し、正々堂々と素晴らしいプレーで、ひたむきに試合に臨む姿に安心感を抱いていましたし、ディフェンスでも誰にも負けない強さを持っています。それに、山口さんの体力は第1ゲームでずいぶん消耗しているのではないかと素人ながらに考えてもいました。ですから私は、希望さんは逆境にあっても冷静に状況を分析して戦い方を修正し、必ず流れを引き寄せてくれると思っていました。もちろん、負けないで欲しいという願望が確信につながっていたのかもしれません。
事実、第2ゲームが始まると、最初は押され気味だったものの、まもなく6-6で同点に追いつくと、逆転に成功。その後はすっかり調子を取り戻し、8-6、11-7とリードを広げ、一時14-12と追い上げられたものの突き放し、21-17で勝ちを収めました。試合の流れをすっかり変えて劣勢を跳ね返し、苦戦をものにしたのです。

第3ゲームが始まると、初めてファーストポイントを取ると、その後長いラリーでポイントを重ね、3-0、6-1と安定した試合運びで21-10と圧倒し、ついにゲームを連取しました。二人の選手が死力を尽くした試合が終わったのは10時少し前、2時間近い厳しい準々決勝をついに希望さんが制しました。この試合を振り返ってインタビューに答えた希望さんは、「山口さんの全力のプレーに対し、自分も全力のプレーで返したかった」と語っています。

 

私たちは、顔中涙でぐしゃぐしゃにしながら、全身の喜びを爆発させるかのように総立ちになって、希望さんに嬉しい声援を送りました。そのとき観客席はほとんどの人が立ち上がり、会場は大歓声に包まれました。希望さんの決して試合をあきらめない、粘り強く、一心にプレーする姿に感動したのだと思います。
試合が終わってから、隣の席のお父さんと手を握り、私は「希望さんが負けるわけがないと確信していました」と得意げに話したところ、お父さんは「本当ですか、私はこの試合だけは正直、ダメかと思いました。」と苦しかった胸のうちをおっしゃっていました。ずっと希望さんの試合を見、冷静に分析してきたお父さんでも、楽観できない経過だったことを知り、ただ気合だけで応援していた私がずぶの素人でよかったと、率直に思いました。
応援席では、同じチームメイトで、しかも仲のよい2人の対戦に応援の配慮がありました。オリンピックではお馴染みの「にっぽん!チャチャチャ!」を中心にして、お互いの選手のミスに喜ぶのではなく、いいプレーに拍手を送り合おうとの暗黙の約束でスタートしました。しかし、3ゲーム目の途中からはお互いの応援に熱が入り、結局は、私たちも、当然のようにフルバージョンの掛け声を送るようになってしまいました。
それまでの応援の定番「いっけー行け行け、行け行けのぞみぃ、行け行けのぞみっ、おっせー押せ押せ、押せ押せのぞみぃ、押せ押せのぞみっ、Go! Fight! Win!」でした。
因みに、大町に帰ってきて知った文化会館のパブリックビューイングでの応援では、松本山雅後援会大町支部の皆さんに指揮を執っていただいたのですが、コールは、「おーくはらのぞみっ、ババンバ・バンバン、ババンバ・バンバン」でした。ダーウィンの進化論のガラパゴス諸島の話ではありませんが、場所が変われば応援もこのように違っていて、後日の大町でのお祝いの会の席上では、初めて聞く故郷での応援に、希望さんもちょっと驚いた表情でした。
長い試合が終わり席を立つと、他の国からの観客が次々に笑顔でそばに寄ってきて、お祝いを言い、さらに一緒に写真を撮ってと言われ、諏訪県議さん、二條議長さん、それに希望さんのご家族の皆さんにも入っていただき、肩を並べて何枚も撮ってもらいました。これは試合が終わるごとの嬉しい風景でした。きっと、目立つ鮮やかな桜色の法被と、日の丸を染め抜いた鉢巻の日本の典型的なコスチュームが珍しかったからでしょう。特に、ブラジルの皆さんは親日的で、どこでも陽気に声をかけてくれました。
この日、試合が終わって選手の控え室に戻ってから、いつも応援席近くの選手と観客が出会えるミックスゾーンに姿を見せてくれていた希望さんは、なかなか姿を見せません。もう午後10時を過ぎていました。私たちは、ついさっきまでの大激戦を思い出して、大丈夫だろうかと少し不安に思っていました。やがてご家族や応援の私たちのところにやってきた希望さんは、表情こそいつもの希望さんでしたが、長い戦いの後さすがに精根尽きたという感じがありありでした。私も、お疲れさま、良かったねと声を掛けるのが精一杯で、「ありがとうございます。」と手を握り返して気丈に答えてくれた希望さんは、疲れも極度になっているにも関わらず、ほっとした柔らかな表情がとても印象的でした。見ると、大事をとって右脚にアイシングとテーピングがしてあり、極限まで働いてくれた脚を大事に癒しています。早く休んで、と言う声を背に、この日は写真はご家族とだけの1枚だけにして控え室に戻っていきました。後でお父さんに伺いますと、国際大会のトップアスリートは誰でも、身体を極限まで酷使して、お互いぎりぎりのところで競技しているのだそうです。伸びていく選手は、怪我をしないよう自己管理できることがまず大切な要素なのでしょう。

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