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貝殻の話(平成23年5月)

  3月の東日本大震災のあと、津波のことが心配で、しばらくの間は海辺に近寄ることは避けたい気持でした。それでも、陽光がやわらかさを増しますと、まだ風が少し冷たくても海辺に行ってみたくなるこの頃です。
 ずいぶん昔、春の三浦海岸を歩いて貝殻を拾い集めたことを思い出します。特に、少し風が出て白波が立つような日には、打ち寄せる波が運んでくるのでしょうか、たくさんの貝殻が打ち上げられていました。
 その貝殻の中で、さくら貝は、その名のとおり、ほんのり桜の花びらのようにうす紅色をしていて、名曲「さくら貝の歌」にも歌われているように「ほのぼのと薄紅染むる」風情は、なんとも形容しがたいものがあります。小指の爪ほどの大きさで、しかも透けて見えるほど薄いため、拾うときにうっかり力を入れると、すぐに割れてしますほどの繊細さです。

 しばらく前、NHK教育テレビの「美の壺」という番組で、貝殻の美しさと鑑賞のツボをテーマに放送していました。ぼんやり見ていますと、貝殻もさまざまで、ずいぶん珍しいものもありました。丸みを帯びて光沢のある宝貝は、つやつやして昔、貨幣として流通したとのこと。また、竜宮翁(リュウグウオキナ)というのは、40年前には、世界に2個しか確認されていなくて、今でもコレクターに珍重されているそうです。
 歴史上、さまざまな逸話に溢れるものもあるようです。大糸掛貝(オオイトカケガイ)というのは、フランスの貴族夫人が自分の領地と引き換えに手に入れたというエピソードがあり、繊細なガラス細工のような美しさが高く評価されているそうです。ものの本によりますと、イトカケガイ科と総称されるグループがあって、海の細かい砂底に住み、貝殻は紡錘形をして、多くは白色、殻の表面に縦に糸をかけたような肋(ろく)を持つ、とされています。肋というのは、貝の成長につれて、表面の成長脈に沿ってできる数本の「ひだ」のことで、これが貝に糸をかけたように見えることが名前の由来になっているのだそうです。大きさは、多くは数センチということです。
 実は、私は昔、この貝殻を拾ったことがあるのです。もちろん小さめのものですが、当時そんなに貴重な貝とは知らず、確か小さなお宝箱か何かに入れておいたはずなのですが、何度かの転勤引越しの間にどこかに紛れ込んでしまったのか、とんと見かけません。

 一方、生きた貝の話ですが、本州の内陸部に位置する大町市でも、淡水の貝が生息しています。シジミとカワシンジュガイです。両方とも、北アルプス山麓の木崎湖から流れる農具川とその支流に生息しています。生息地が長野県の天然記念物に指定されているカワシンジュガイは、水のきれいな川にしか生息しません。なぜならこの貝の幼生は、清流に住むヤマメのえらに寄生して成長するからです。この貝の生息域は、周辺の地域の皆さんの保護活動によって大切に守られていて、豊かな自然のバロメーターとなっています。

 生きていて大自然の一部を形成している貝は自然の中に置くほかはありませんが、一生を終えることにより自然の生態系から離脱した貝殻は、宝箱の中に納め、時折手にとって眺めることができます。いわば、貝は死んだ後、貝殻となってからの方が永遠の命を得ることになるのです。

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