大町市に魅力を感じ、Iターン・Uターンして地域に根ざした仕事に従事されている
皆さんや、大町市の地域資源を活用した仕事を起業された皆さんを紹介します。

ジャムの瓶詰め作業を行う傘木さん(左)
お店に併設された加工施設でジャムの瓶詰め作業を行う傘木さん(左)

 木崎湖の東岸でブルーベリーの栽培を行い、それを加工してジャムの製造販売する北ヤマト園の傘木知子(かさぎともこ)さんにお話を伺いしました。無農薬有機栽培の素材の良さを引き出すジャム作りをのぞいてみましょう。

――この仕事を始めたきっかけを教えてください。

ブルーベリーのクローズアップ写真
収穫期を迎えたブルーベリー

傘木さん 私は、白馬からここへお嫁にきました。ブルーベリーを始めたのはね、作っていたリンゴが腐乱病で駄目になってしまってね。ちょうどそんなときに県からブルーベリーを作ってみないかと、試験栽培を委託されたんです。昭和52年のことです。150本、5畝(約5a)で始めました。そうしたら、割と成績が良くて。ここの気候や土壌がブルーベリーに適していたようです。それでこの辺に広がったんです。ブルーベリーには有機質が良いと聞いてましたから、落ち葉に稲わら、油かすとか入れました。製材所のおがくずをもらってきて、堆肥にして敷いたり、もみ殻を敷いたり。土がホクホクしてね、見れば普通の土とは違うことが分かりますよ。

 最初は、農協を通じて市場に出荷してましたが、冷蔵庫に入れずに、ただ摘んできたのを渡すと、農協から市場に行く間に水が出ちゃうんですよ。果物だから過熟になってね。そうなると商品価値ゼロ。二束三文になっちゃって。それで、加工してジャムにすれば、日持ちするだろうって考えました。ジャムなら1年は持つと思うけど、私は6から10カ月のうちに食べてもらうようにしています。

――ジャム作りはどこで勉強したんですか?

ジャム作り煮詰め工程の写真
お砂糖を加えプルーンを煮詰める

傘木さん どこかで習ったわけじゃなく、自分で試行錯誤して、いろいろ作ってみて、この味が一番良いってのを見つけました。ブルーベリー、プルーン、アンズ、リンゴ、ルバーブの5種類を作っています。無農薬・有機栽培が信条で、ジャムも砂糖は少なめで添加物の入らないもの作ろうと心掛けているの。

 ジャムの材料だけど、ブルーベリーとルバーブはうちで栽培しています。リンゴとプルーンは松川や大町のもの。アンズは千曲市更埴の契約農家から。できる限り地元のいいものを選んで使っています。

プルーンジャムの瓶詰め工程の写真
プルーンジャムの瓶詰め工程

――どのように営業されてるんですか?

傘木さん 口コミが大きいね。今はインターネットに載せないかとお誘いもいっぱいあるけどね、歳も歳だしね、相応にしとこうと思います。でも、カーナビにも載っているらしくて、それを見て来る方もありますね。お金を出して広告したことはないけれど、雑誌に掲載させてほしいと頼まれて載せてもらってます。

――仕事をする上でのこだわりは何ですか?

傘木さん 作りながら売るってところですね。お砂糖少なめで、健康志向の方の好みに合った商品です。ジャムはお手伝いの方と2人で作ってます。月に何回か在庫が終わりそうになったら作る。いつも新しい、作りたてのジャムを並べておきたいから。よそではシーズンパックといって、収穫期に一年売る分をパックして売ってるそうだけど、私のところは冷凍庫に入れておいて、一度に作るのは100本くらいずつ。無くなればまた作るって感じでやってます。作って何ヶ月も置くと香りが飛んじゃうの。甘みは残るけど、せっかくの果物の良い香りがなくなっちゃうからね。

5種類のジャムの写真
手造りジャムは全部で5種類

 市販のものには、水あめやペクチンを入れたものもあります。ペクチンを入れれば固まりますからね。香料やシロップなども…。私は、ただ果物をお砂糖と煮詰めるだけ。ものによっては色止めにビタミンCを少し入れるけど、ブルーベリーとルバーブは砂糖だけです。だから、果物いっぱいのジャムなんです。

 生のブルーベリーだってよそとは違います。うちは完熟した実だけを選んで、取ったらすぐに高湿冷蔵庫に入れて、クール便で出すから鮮度が落ちない。

 皆さん毎年、夏を楽しみにしてくれていて、ブルーベリーが届くのを待っていてくれるの。だから、おいしいのを送ってあげたい。

――素敵なお店ですが、いつの時代の建物ですか?

店内の写真
古民家の造りを生かした民芸調の店内

傘木さん 明治20年ころできた120〜130年くらいの古い民家なんです。平成9年に改装してこの形になったんです。柱とはりは昔のまま。西側の大きなはりから向こうは昔はうまやだったんです。馬が居るところなので、かんなで仕上げるのではなく、手斧(ちょうな)削りだったんですが、今では手斧削りのはりの方が貴重でしょう。設計士さんが「これを見せたいから、お店は西側がいいじゃないか」と言って、入口がこちらになったんですよ。昔は南が入口だったんですけどね。

 こういう民芸調のお店だからおかしなものも置けないし、大変です。これは、お客様のご縁でね、五月のぼりをタペストリーに仕立ててもらったもの。飾っていると来てくれる方々がとてもほめてくださる。そうすると話も弾んでありがたいですよ。

 それと、このカレンダーも、長年のお客様が毎年持ってきてくださるんです。もう十年以上になりますかね。このカレンダーが縁で、次に来てくれたお客様から直筆画をいただいて。親せき付き合いみたいになってるお客さんも多いですよ。お茶と一緒に手造りの一品、おやきなど出したりして、歓談しながらのおもてなしを心掛けております。

――今後の事業展開はどのようにお考えですか?

傘木さん 私はもう78歳にもなるし、この店を閉めようかしらと思うときもあるの。商売という面からすれば、昔に比べて観光客が減ったことが、一番ダメージですね。白馬の民宿も三分の一くらいは閉めたんじゃないかしら。何しろ観光客を呼ぶことが第一ですよ。市の観光課には頑張っていただきたいです。

招き猫3匹の写真
店内の装飾品は、お客さんからの贈り物も多い

 今まで一生懸命働いて、ここまでしてきたから、余生を楽しみたい気持ちもあるんですよ。絵手紙書いたり、お裁縫したり。自分の趣味をやりたい。娘は「あたし、やってもいいけど…」とは言うんですが、維持費も掛かるし、どうしたものか難しいですね。

 こうして手作りでいいものを作っているっていう所が数えるほどになってるでしょう。添加物が入っているものより、まごころを込めて作ったものを皆さんに食べてもらいたいっていうのが私の願いなんです。

 でもね、良いものを作ろうとすると、それなりきにお値段が張っちゃう。リンゴだって、自分で食べてみておいしいもので作るでしょう。私は、ブルーベリーの収穫を頼んでいる方にも厳しいんですよ。「熟した良いのを摘んできて。赤いのは駄目だよ」って。早取りすると味が落ちるんです。それに香りも。取る人は大変だと思いますよ。でも、おいしいジャムをつくるためには手を抜けないの。

 新しいことを始める元気はないけれど、お客さんが注文をくださる限りは、ここでジャムを作っているんじぁないかしら。

――大町の地域資源の魅力を教えてください。

招き猫3匹の写真
仁科三湖周辺の景観が宝です

傘木さん 寒暖の差が大きい気候が魅力ですね。朝晩の温度差で果物がおいしくなる。それは果物に限ったことでなく、野菜でもそうです。親しくなったお客さんに、うちの野菜を送ることもありますが、全然味が違うって言いますよ。

 それと、観光面から言えば仁科三湖。湖水はきれいで、北アルプスは素晴らしく「こんないいところはない」って皆さん言いますよ。だから、三湖を周遊できるバスルートや木崎湖を一周できるサイクリング道路があれば、もっとお客さんが来ると思うんですよ。そうなれば、地域で作ってる野菜や果物も売れるし。大町市は、すごく恵まれた観光資源を持っているのに、生かし切れていない気がします。もったいないですよ。

――市民の皆さまに伝えたいことがあれば教えてください。

傘木さん 食は健康のもとだから、手作りの栄養のあるものを食べて、元気に暮らしてもらいたいですね。子供たちに起きている問題の多くも、食事が原因のことがあるんじゃないかしら。自然のいいものを選んで、油、砂糖は少なく、減塩で調理していただきたいですね。皆さん忙しいからインスタント食品に頼るときもあるでしょうけれど、そんなときは野菜や海藻、果物をプラスしてほしいの。健康には一番福がやって来ます。そんなことで私は本物のジャム作りしているんです。

北ヤマト園店舗写真
国道148号を挟んでJR稲尾駅向い

企業情報

組織名
北ヤマト園
代表者
傘木 知子
創業
昭和52年7月
郵便番号
〒398-0001
住所
長野県大町市平11639
電話番号
0261-22-0625
ファックス
0261-22-0625
なし
ウェブサイト
いーずら大町特産館

北ヤマト園の所在地

北ヤマト園

 
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次回は「青木湖のホタルクルーズ」を紹介します。

関連リンク

○ながの創業サポートオフィス(長野県中小企業振興センター)

○信州人キャリアナビ(長野県商工労働部労働雇用課)

○中小企業相談所ホームページ(大町商工会議所)

○定住促進ホームページ(大町市役所)