大町市の地域資源を活用したコミュニティビジネスや、社会的課題に取り組むソーシャルビジネスを紹介します。

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山あいに建つ八坂こうげんの加工場

 2012年2月に設立したばかりの株式会社八坂こうげん。大町の寒さを利用した寒干し大根などの特産品を製造販売しています。40年の営業経験で培ったセールス手腕で販路を開拓し、調理師として顧客視点で商品開発を行い、大町の農産物とシルバーパワーを生かす事業を牽引する吉澤正毅(よしざわまさき)さんに話を伺いました。

――この事業を始めたいきさつを教えてください。

吉澤正毅の写真
吉澤正毅さん

吉澤さん 八坂地区で旧八坂村時代から農産物の加工と販売を行っていた株式会社八坂とくさんという会社があったのですが、その会社が解散した後、同様の事業を行う会社として、創業しました。地元の農業振興に供することを目的としています。

 販売先が無くなることを農家の皆さんは心配していましたから、「引き続き農産物を出荷することができてよかった」と大変喜ばれています。

――どんな商品を販売しているんですか?

吉澤さん ジャム、トマトソース、生パスタなどの加工食品と、いろんな豆や雑穀、寒干し大根などの農産品を扱っています。ピザの生地や紫米を使ったケーキなども始めました。地元にある良い素材を使って、それを生かす商品を作ることを心掛けています。

 うちは、小さい会社なのでテレビや新聞など広告にはお金を掛けられません。そこで、素人さんじゃなくて専門家、ホテルの料理長たちに売り込んで、彼らが食べて「これなら行ける!」というものだけを商品として出すようにしています。プロのお墨付きが得られれば、一般に売り出しても心配ないですから。

ジャムの写真
ヒット商品のジャムとパスタソース

 そうして完成したジャムはヒット商品になりました。普通は保存料を入れたり、原液を70%以下に薄めます。沈殿しないようにペクチンを入れて固めるんです。だけど、私たちは違います。ホテルに使うのははちみつやそういったものを一切入れちゃいけない。無添加で原液100%です。もうけを追ったら、原液100%なんてできません。

 だから、ダムに来たお客さんが1本買って帰ったとすると、その方から後でファックスが来るんですよ。ジャムを送ってくれって。他所と食べ比べしているから違いが分かるんですね。リンゴもブルーベリーも全部地元のものを使っています。できるだけ大町のものを使って、PRしていくつもりですよ。

 生パスタはイタリア製の珍しい機械を使っていて本場の味が楽しめます。お米や季節の食材を練り込むなどしてバリエーションを増やしています。生なので日持ちしません。それで注文生産となっています。ゆで時間は2分、調理時間が非常に短いのが特長です。私自身が調理の免許を持っているので、調理をするシェフに喜ばれる商品を企画するよう心掛けています。

――こだわっていることがあったら教えてください。

吉澤さん 自分でお客さんのところへ行って、営業もやれば、納品もします。大町から始まって、松川、穂高、豊科まで納品に飛んでいきます。伊那、原村、東御など県内の道の駅20カ所に商品を置いていただいてます。車の走行距離は1カ月で6千キロを超えます。

寒干の風景写真
加工場の軒下に吊られた寒干し大根

 いくら物が良くても買ってもらえないと意味がありません。販路が無ければ売れないですよ。我々のような加工業者は、生産のことばかりに目が行って、販売先の開拓は後回しになりがちです。このことに関しては、伊那のグリーンファームさんから多くを学ばせていただきました。ここで行われている生産者を元気にする流通の仕組みづくりを大町でも進めたいと思います。

 また、営業時には、その食材を使うメリットを納得してもらうために、レシピを作ってお客様に持っていきます。うちの場合、調理長であることが多いですが、調理方法や食べ方を提案して、メニュー作りの相談相手になるように努めています。相手にとってはなじみのない食材であることも多いですので、調理したものを持っていき、試食してもらうことも欠かせません。

 例えば、特産品の寒干し大根。大根だって馬鹿できませんよ。煮たり焼いたりしなくてもいいから、ホテルにとってはすごく楽です。水に戻すだけでお金が掛からない。桂()きにして寒風にさらして乾かした後、グラムを計って、畳む。ホテルで巻物に使うからです。透き通って見える食材は稀少だし、大根だからヘルシー。すぐに使えて手間要らず。ホテルでの使用を想定して、こういう形にしたんです。寒干し大根は、普通は輪切り、場所によっては短冊。ところがホテルというところは、大きさが一定でないといけない。団体さんからのクレーム対策です。大きさがそろっていて、何にでも使えて、1年間保存が利く。そりゃ喜ばれますよ。注文に応じきれないほど需要があるんです。

 特許を申請しているので、これを作れるのはうちだけ。実は、県内のある自治体からは「販売権はすべて任せるから、作らせてくれ」という話も来ています。でも、まずは自分のとこを助けなきゃいけないから待ってもらっています。要するにこれが農家の冬の仕事としては寒い地域にはビッタリなんです。この仕事は、八坂のおばちゃんたちにとって、冬の間の良い小遣い稼ぎになっています。

――大町の地域資源の魅力について教えて教えてください。

吉澤さん 事業をしていて感じるのは、食材が非常に良いことです。ホテル業界では年に2回、食品の品評会をして使用する食材を選んでいます。農産物は北海道が有名だし、品質もいいと思うじゃないですか。でも試しに八坂や美麻のものを出したら、皆入選したんです。八坂の特長は低いところで456メートル、高いところは1,100メートル以上のところもあり、気候的にも地形的にもいろんな作物ができます。だからそれを利用できるのはありがたいですね。

 犀川(さいがわ)線沿いでは干し柿、鷹狩山の北斜面は花豆、切久保では畑でサルナシを栽培しています。うちは、農家の皆さんに農産物を全部指定で作ってもらっています。それだけでなく、種から配付します。農家と一体となることで、栽培の技能が上がります。収入は増えて、張り合いがあるから皆いいもの作ってくれますよ。

――寒干し大根が冬期の高齢者の現金収入の手段になっているとのことですが、地域コミュニティとの関わりを教えてください。

吉澤さん 6、7年前までは寒干し大根の生産農家は20数軒もありましたが、高齢化により今では4、5軒とここで共同作業をするだけになりました。全国的に一人暮らしのお年寄りが増えています。ここでは地域のそういう方たちに大根の栽培を委託しています。お婆ちゃんたちは、畑に行ってると体が痛いの忘れるって言います。それで、仕事をするから、ご飯がうまい。加えて、夜は良く眠れるそうです。健康維持にはお百姓が一番です。大町市だって高齢者の人が元気でいてくれた方がいいに決まってますよ。

寒干し大根の調理写真
寒干し大根の調理例

 この方たちを加工所まで車で送迎し、寒干し大根の折り畳み作業をお願いしています。朝9時に来て、10時にお茶、お昼にお弁当、3時におやつ、そして夕方に帰ります。皆さん普段は独りだから、話がしたくて仕方ないんですよ。存分におしゃべりしていただけるよう従業員とは別に専用の作業部屋を用意しています。この方法は、2年前に試験的に始めたのですが、独り暮らし農家の高齢化に合わせて、今後もっと拡大していくつもりです。

――新しい取り組みや事業展開があれば教えてください。

吉澤さん 今の高齢者は昔からお百姓をしていて、物を作って売ってきた経験もあるから大丈夫なんだけど、心配なのは次の世代の人。65歳で定年になったら家でする事が無い。仕事人間だったから地域社会とのつながりも無い。何もしないでいたら具合が悪くなってしまうでしょ。だからね、いろいろ作って、うちに売って収入を得るという仕組みを親の代に築いておけば、次は自分ですよ。街中に家があっても、ここ(八坂)に土地があったら畑をやりに来られます。うちの指導に従って指定品種を栽培してもらえるなら、たとえ少量だって引き取りますよ。そうすれば、現金収入が得られる。そうやって、歳を取っても山の中で生活していけるような仕組みを維持していきたいですね。

 やる気があって、うちの経営方針に賛同してくれる人には私が開拓してきた販売網を使って、直接売ることのお手伝いをすることもして行きたいです。一度は定年退職していますし、いつまでもできる歳でもありません。次の世代に伝えてあげたいですね。

 それから、当地にある食材の良さを生かした新商品の開発を加速させます。この地域の農産物には、まだまだ可能性があります。それを全国の人に伝えていきたいですね。

――最後に市民の皆さんにメッセージをどうぞ。

吉澤さん ひとつにはね、こういうものが地元で作られていて、四国や九州の人が喜んで買ってくれているということを知ってほしいです。パスタとトマトソースをセットにして全国に送っているんですよ。地元の人が食べたこともないっていうんじゃ寂しいじゃないですか。試してみてね、いろいろと批評してほしいんです。ぜひ、感想を聞かせてください。

 それともうひとつ、そんなに大量に作るんじゃなくて、健康のためにお百姓をやってみようという方がいらしたら、八坂こうげんの指定の作物を作ってみませんか。できたものは当方で引き取ります。こちらの指示に従って作っていただくのが条件になりますが…。空いている畑と時間を収入に変えられますよ。

施設の写真
明日香荘入口の近く

団体情報

会社名
株式会社 八坂こうげん
代表者
代表取締役 吉澤 正毅
創業
2012年2月20日
郵便番号
〒399-7301
住所
大町市八坂6556-3
電話番号
0261-26-2005
ファックス
0261-26-1515
ご連絡はファックスで
ウェブサイト
なし

 

八坂こうげん 関連施設マップ

 
明日香荘の販売ブース写真
明日香荘でも販売しています
直売所高瀬川の外観写真
乾燥が終わったばかりの大根
会社風景の写真
豆類などの農産物も人気

次回は「青木湖漁業協同組合」を予定しています!

関連リンク

○ながの創業サポートオフィス(長野県中小企業振興センター)

○信州人キャリアナビ(長野県商工労働部労働雇用課)

○中小企業相談所ホームページ(大町商工会議所)

○定住促進ホームページ(大町市役所)