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大町高校、大町北高の閉校式(平成28年3月)

春まだ浅い3月3日、大町市内の2つの高校がともに1世紀を超える長い歴史に幕を閉じ、閉校式の日を迎えました。両校ではそれぞれ、卒業式に続いて閉校の式典が開催され、県教育委員会伊藤学司教育長の告辞に始まる厳粛な雰囲気の中、閉校を惜しみ両校の長い歴史を改めて思い起こす機会となりました。

大町高校は、明治34年に松本中学の分校として開校して以来115年もの、また大町北高は明治45年以来、103年もの歴史を刻み、古い伝統を保ってきました。卒業生の数は両校合わせて3万2千人にも及び、大町北安曇地方の高等教育の拠点として、各界で活躍する有為な人材を輩出してきました。大町高校の卒業生には、日本人として初めて世界の最高峰エベレストの頂上に立った平林克敏さんや、ノルウェー極地研究所で北極圏の研究に打ち込まれている太田昌秀博士、医師で国連のユニセフ東京事務所代表としてご活躍の平林国彦さん、若い卒業生では国立天文台准教授でラジオ、テレビで宇宙の不思議を熱心に解説している縣秀彦さんがいます。いずれの方々も学究肌でいて行動派という、大町にこそ生まれうる人材だと思います。

大町高校閉校式

 

ところで、私の母校でもある大町高校の伝統行事に、昭和23年に始まった全校登山があります。全校登山は、「善行」登山の誤りではありません。文字どおり全校生徒が8つほどのコースに分かれて、市街地の上に聳える北アルプスの峰々を目指し登るもので、学窓から目近にアルプスを仰ぎ見る大町ならではの学校行事で、全国唯一だそうです。安全確保のサポートには山岳部やそのOBの皆さん、我が国初という歴史を持つ大町登山案内人組合などの山の専門家がついていただき、1年生や脚に自信のない生徒は1泊2日のコースを、2、3年生の健脚組は市の最南端に位置する槍ヶ岳などへの2泊3日の縦走に参加します。因みに、私は軟弱な輩と言われたくなくて、気合を入れ1年生のときは常念岳から燕岳までの縦走を、2年生では爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳までの縦走を選びました。アルプスの稜線の雲の上を歩くのは爽快で、心に残る山行きだったのを覚えています。

また、大町高校の「西に東に聳え立つ」で始まる伝統の校歌は、東京音楽学校を卒業し着任していた島田穎治郎先生の要請により、恩師で東京音楽学校教授であった吉丸一昌先生が明治44年に作詞しています。多くの皆さんがご存知のように、吉丸先生は春を告げる愛唱歌早春賦の作詞者として知られ、大正2年に発表された早春賦と大町高校の校歌との深い繋がりを感じます。
 閉校式では、ブラスバンドの伴奏で校歌が高らかに斉唱されました。私は公式の場で歌う最後の校歌を歌いながら感極まる思いでした。卒業後、故郷を離れても同窓の仲間が集まると、いつもこの校歌を歌って旧交を温めあっており、かれこれ50年近くも母校の校歌に馴れ親しんできたことになります。

大町北高校閉校式

 

一方、大町北高では、女学校として開校間もない頃から、早春賦を歌い継いできた伝統があります。早春賦研究家の鹿島岳水氏や井関正治氏によりますと、大正2年に北高の前身、大町実科高等女学校へ、やはり東京音楽学校を卒業した崎山輝先生が女性の音楽専任教員として赴任して、歌唱指導をしたことが明らかになっています。吉丸先生の教え子でもある崎山先生からは「この歌は大町の歌ですよ」と教えられ、熱心にこの歌を指導された、との北高卒業生の証言が残されています。閉校式が挙行された大町市文化会館の前庭には、多くの皆さんの篤志により建立された「早春賦発祥の地」の碑があることにも深いご縁を感じます。この地の人々に長く歌い継がれてきた早春賦の来歴を忘れることはできません。

また、大町北高では伝統行事として、全校を挙げてアジア・アフリカ難民支援運動、通称アジアフ活動に取り組んでおり、マリ共和国へ毛布などの支援物資を贈る社会貢献活動は30年以上も続けられています。毎年、生徒たちが市街地の各家庭を回り、あらかじめお願いしてあった支援物資などを集めて整理し、大型トラックで送り出すまでの一連の活動は、すべて生徒たちの自発性と地域の温かい理解に支えられてきました。

このように100年もの時を刻んできた両校の閉校には、私も市長という立場を超えて感無量で、言葉に代えがたい深い寂しさを感じますが、嬉しいことに、伝統の全校登山やアジアフの活動などは、新しい高校に受け継がれることになっています。

この2つの高校の再編統合は、近年の人口減少や少子化等の大きな変化を背景として、県教育委員会が県下各地で進めている高校教育の抜本的改革の一貫として決定されました。両校の閉校を受け、この4月には改築された新しい校舎で大町岳陽高校が開校します。

閉校式で私は、長い伝統を育んできた両校の歴代学校長や諸先生方の教育に対する崇高な使命感と、学校を支援してきた地域やPTA、同窓会などの皆さまの学校に寄せる献身的な活動に深く感謝するとともに、これまで脈々と受け継がれてきた両校の歴史と伝統が、新生大町岳陽高校にしっかり受け継がれ、地域の期待を担う拠点として飛躍することを願っていると述べました。また、卒業生の皆さんには、それぞれの高校の最後の卒業生であることに誇りを持っていただきたいことを、また、新しい高校に移る在校生の皆さんには、これまでの経験を活かして新校の真新しい礎の上に新たな歴史を刻んでいただくことをお願いし、御礼の言葉を締めくくりました。

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