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春の山、コブシとタムシバ(平成27年5月)

 市役所の食堂は、職員や用事で市役所を訪れる市民の皆さんのお昼の憩いの場になっていますが、北アルプスの眺望がみごとな隠れた名所です。
 4月のある晴れた日、昼食をとりながら雄大な峰々の景色を眺め、徐々に視線を麓の方に下げてきますと、山肌一面に白い霧か霞がたなびいているような光景が目に入ってきました。そういえば毎年この頃になりますと、市役所の西に聳える鍬ノ峰は斜面いっぱいに白い花で覆われます。この山は、前にもこのつれづれ日記で紹介した標高1623mの里山ですが、中腹の800~1200m辺りにかけて、コブシやタムシバの花が咲くのです。この木は広範囲に群生しているのですが、決して派手な色あいではなく、目にも穏やかな控えめの白なのです。
 鍬ノ峰ばかりでなく、市の郊外を流れる高瀬川の奥まったところにある秘湯、葛温泉の渓谷沿いや、黒部ダムの玄関口に至る篭川沿いの蓮華岳の北斜面にも、雪解けを待って一斉にこの花が開きます。

コブシやタムシバの花が咲く山肌

 

 この辺りの里山では、春とともに咲く花には、おおむね順番があります。最初に咲くのがマンサクで、次いでダンコウバイ、クロモジと黄色い花が続きます。そのやや後に続くのが白いコブシやタムシバということになります。安曇野の一角を占める大町市内の屋敷林や郊外の林ではごく普通に見られ、花の少ない春の早い時期に、しかも木いっぱいに白い花がまるでシャンデリアのように咲くため、いっそう目立ちます。しかし、花の時期が終わると忘れてしまうためでしょうか、咲いて初めてそこにあることに気付きます。

 ところで、コブシとタムシバはともにモクレン科の木で、遠くから眺めただけでは違いが分かりにくく、見分けは容易ではありません。木の肌は比較的滑らかで、どちらも白灰色をしていて、ほぼ同様に見えますし、結構大木にもなるため高いところに花がついていて間近かに見ることができず、なかなか判別がつかないことになります。実は私もそんなに詳しくなく、近くでよく見て考え、何とか判かる、といったところです。自分では、花びら一枚ずつが少し細長く、そのため花びらの間の隙間が広く見えるのがコブシ、花びらが短くふっくら丸みを帯びているのがタムシバ、と覚えるようにしています。
 以前勤務していた伊那市の郊外で、一緒に出かけた樹木に詳しい職場の仲間が路傍の高木を指差し、「あの木、何だか分かりますか。」と問われ、聞くからにはきっとポピュラーなコブシではないと直感し、「タムシバ?」と、当てずっぽうで答えたところ、良く知っていますねと誉められたことをうれしく思い出します。

ネットを開いて確認してみますと、両方とも日当りの良い場所を好む落葉高木で、葉の出揃う前に花が開きます。コブシの木は17~18mもの高さにまでになり、赤みを帯びた果実は集合果といって実が固まりになってボコボコした感じで、握り拳のような形であることが名前の由来とされています。
 一方、タムシバは葉を噛むと甘みがあり、「噛む柴」の別名があって、それが訛ったものとのことです。また、枝を嗅いで見ますと、スーッとするキシリトールのような芳しい香りがあり、そのためニオイコブシという別名もあるそうです。樹高は4~5m、大きいものでは10mにもなるようです。幸い、コブシとタムシバの見分け方も載っていて、それによりますと、花が全開になったとき、コブシの方は花のすぐ下に小さい葉を1枚つけるのが特徴で、タムシバにはありません。今度からは、私もここに注目してよく観察してみたいと思います。

コブシの花

 

雪国の春は一斉にやってきます。信州では、梅も桜も、杏もリンゴの花も、先を争うかのように咲き始めます。野山でも、木々が決して時期を間違えることなく、毎年、様々に花をつけます。長い冬の厳しい寒さからようやく解放された喜びで人間だれもが弾む気持になるように、植物も嬉しさを一斉に開花する花の姿で表現しているかのように感じます。そして、その花を愛でるのもまた、春を寿ぐ人間の春の喜びなのでしょう。

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