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山羊の季節(平成27年5月)

春を迎え、野や山に緑の草が伸び始めると、山羊の季節がやってきたなと感じます。もちろん、実際に「山羊の季節」というものがあるわけではありません。ですが、この季節になりますと、ここ数年、あちこちで山羊の姿を見かけるようになりました。

 大町市内でも、大町温泉郷に近い郊外の草地に放された山羊が、のんびり草を食んでいる姿を見かけます。山羊の放牧です。ここでは、この春生まれた双子のオスとメス1頭の3頭がすくすく育ち、親や仲間の8頭に交じって元気に草を食んでいます。10頭もの山羊の群れる姿は壮観で、見ていてもちょっと嬉しくなってしまいます。

 昨年の春、市役所の若手職員が30人ほどでグループを結成し、耕作されずに草だらけになった荒廃農地を復活することを目的に、北アルプスのイメージに合う景観動物として山羊の放牧を始めたのです。市内では、平成22年の農林業センサスの調査時点で、耕作されずに荒廃したままの農地が167ヘクタールもありました。この現状を何とか改善しようと立ち上がったのがこの若手のグループです。

 放牧する畑は、大町産のワインを創る取組みの初期の段階でワイン用ブドウの試験栽培地として使われた市有地で、面積はちょうど1ヘクタール。これまで放牧に充てていた面積は70アールで、今年は頭数が増え、草の量が不足するため90アールに増やすと、面々は意欲満々です。グループの計算では、草の生える量と食べる量のバランスが良いのが1頭当たり10アールで、これが山羊飼いの通説とされていて、この目安を守れば景観を保全しつつ山羊も飢えないということになるのだそうです。10頭なら計算上1ヘクタールの草地で足りるということになります。

しかし、たとえ家畜であってもゼロからの出発であり、動物を飼育すること自体、結構難しいことだと思うのですが、大学で畜産学を専門に学んだ職員、金原徹さんが中心となってプロジェクトを立ち上げました。まず、会員の手作業で荒れたままの放牧地の中に山羊小屋を作り上げました。そのお陰か、この冬、大雪の中、山羊たちは元気に乗りきりました。

金原徹さん提供

金原徹さん提供

グループのこの活動は、市の「きらり輝く協働のまちづくり事業助成金」を活用して取り組んでいるもので、昨年、助成金を申請するに当たって名づけた団体の名は「大町市耕作放棄地有効活用促進団体」。なんとも硬い名前で、メンバーからも愛称を、という話が出たそうで、仲間内の公募により「ヤギと草むらの会」と相成ったとのこと。この方が分かり易く愛着が湧きそうです。

 因みに、「協働のまちづくり事業助成」は、市内で地域づくり活動に取り組む市民団体を資金面で応援するもので、平成19年度に始まり今年で9年目になります。この制度の特徴は、市民の自発的な活動に対して、公開審査会で活動団体の皆さんの熱心なプレゼンテーションを聞き、市民の代表が審査員となって採択と助成金額を決定するもので、毎年、1千5百万円の予算枠を用意して様々な市民活動に助成しています。このうち、地域づくり活動と伝統文化の継承活動の分野では、これまでに延べ113団体が累計で約1億4百万円の助成を得て活発な活動を展開してきています。

 さて、この山羊たちは、荒廃農地で草をもくもく食べているだけでなく、いろいろな活動でも活躍しています。市内の保育園や小学校、施設を訪問して、子どもたちの情操教育やアニマルセラピ-にも一役買っており、また、様々なイベントにも登場し、来場者の、とりわけ子どもたちの大きな人気を博しています。私が直接出会っただけでも、昨年は市立大町総合病院の病院祭や市消防団の消防フェスタなどに出演し、子どもたちに取り囲まれて、人気者になっていました。今月30日には、大町市内の鹿島槍スポーツヴィレッジで開催される県の植樹祭「ふるさとの森づくり県民の集い」にも登場し、参加する皆さんのふれあいに一役買うそうです。

 ところで言い出しっぺの金原さんは、もともと市街地にある自宅の敷地内の小屋で、2頭の山羊を飼っていました。まだ人通りの少ない早朝には、2頭の綱を引き、近所を散歩していたそうです。朝の清々しい空気を一杯に吸い、のんびりと散歩する姿を想像しますと、思わず微笑んでしまいます。

ネットで調べてみますと、山羊は古くから家畜として飼い馴らされ、新石器時代の紀元前約7千年ごろの西アジアの遺跡から骨が出土しているそうで、山羊の家畜化はイヌに次いで古いと考えられているそうです。肉用、乳搾り用、毛用など、様々な用途で飼われてきました。品種は数百種類に及び、粗食に良く耐え、険しい地形も苦にしないようで、このような強靭な性質から、山岳部や乾燥地帯でも人々の暮らしに貴重な家畜となっているそうです。

金原徹さん提供

金原徹さん提供

日本では明治以降、多く飼われるようになったそうで、私の小さいころ、家でも山羊を飼っていたことがあり、家の周りで草を食んでいたことを覚えています。高度経済成長期を境に減少しましたが、近年、その愛らしさや粗放的な飼育に耐えうる点などが再評価されているとのこと。羊に比べても乾燥に強いそうで、日本在来種は別として、基本的には山羊は水や湿気が嫌いとのことです。そうすると、やはり温帯モンスーンで雨が多く湿度の高い日本の気候は苦手なのか、それとも雨の恵みにより食草が豊富な日本を天国のように感じているのか、一度、本人(山羊)から直接聞いてみたいものです。

ところで、大町市から長野市に至る県道長野大町線の道路脇には、山羊を飼っている場所を何か所か見かけます。中でも、日本で最も美しい村連合に加盟して地域の活性化に努めている小川村には、道のすぐそばに放牧されている畑があります。道路脇の駐車スペースにはいつも車が止まり、間近かに山羊を眺めている人の姿を目にします。のんびり草を食む山羊の姿には、心が和みます。

私もそこを通るたびに、今日はどうしているのかな、と気になり様子を覗いてしまいます。山羊には人の心を惹きつける何かがありそうです。

「ヤギと草むらの会」では、仲間の輪を広げる取組みも進めています。そのキャッチコピーを見ますと、

○荒地の草を美味しく頂きます!!…耕作放棄地・未利用地募集。
○ヤギに興味のある人集まれ!!……夢のヤギ飼いへ。会員募集

 と呼びかけています。可愛い山羊といっぱい遊べるそうです。

 グループの皆さんの夢は、「全国山羊サミット」を大町市で開催することだそうです。でっかいこの夢が実現したら楽しいですね。

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庶務課秘書係 内線 507
E-mail: hisyo@city.omachi.nagano.jp

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