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雪の結晶を見たい(平成26年12月)

北アルプスの峰々にもう何回も雪が積もり、11月下旬には里に近い鍬ノ峰が真っ白になりました。確かこの地の言い伝えでは、この峰に3回雪が降ると次は里に来るといいます。

小さいころ、空からひらひら舞い落ちてくる雪の粒を、襟巻きや手にはめた手袋で受け止め、小さな結晶を虫眼鏡で眺めたことがあります。絵にかいたような六角形もありますが、いくつかが絡まり合って立体形になっているのもあります。こうした結晶の不思議な形に、はあっと息を吹きかけると、樹枝状の結晶の枝先の部分がさっと溶けたことを覚えています。

市街地からのぞむ北アルプス

結晶には、六角形の薄い板状のものや、木の枝が放射状に伸びているものなど様々な形があります。数年前、市立大町山岳博物館で信州大学山岳科学総合研究所との連携で開催された企画展の講演会で、鈴木啓助先生の講演を拝聴しました。先生によりますと、雪の結晶がどのように生成されるのか、世界で初めて解明したのは中谷宇吉郎博士という方だそうです。

「雪は天から送られた手紙」と優雅な表現を残した中谷博士は、空から舞い落ちてくる雪の生成のメカニズムに着目し、様々な条件下で人工的に結晶を作り研究しました。その結果、「中谷ダイヤグラム」という、気温と水蒸気の量により結晶の形が決まるという生成の仕組みを解明されました。それによりますと、たとえば樹枝状の結晶は零下15度C前後で比較的湿った雲の中で生成され、
また、角柱結晶は零下10~20度Cの、水蒸気の少ない雲の中でできるのだそうです。逆に言えば、地上に落ちてきた雪の結晶を見れば、それができた雲の中の気温や水蒸気の量がわかるということなのだそうです。

また、雪の結晶に海水の塩の粒(海塩粒子)が付着すると重くなるため、遠く内陸部までは運ばれにくく、実際に日本海沿岸の糸魚川市の雪には塩の成分が多く、内陸部の長野県側よりずっと重いそうです。ところで、なぜ水蒸気が凍ってできる雪の結晶に、塩の粒などがついているのかというと、海の波しぶきからできた海塩の粒が上昇気流で上空に運ばれて雲の中に取り込まれ、激しい
対流の中で雪の結晶に付着するのだそうです。この海塩の付着具合を観察すると、雲の中の対流活動の激しさが分かることになります。

あとで中谷博士のことを詳しく調べてみますと、明治生まれの物理学者で、北海道大学教授を勤められ、随筆家としても有名な方でした。故郷の石川県加賀市には、博士の業績をたたえる「雪の博物館」があり、博士の研究の数々が展示されているそうです。私も時々石川県には出張などで行く機会があるのですが、加賀市にこのような凄い博物館があるとはまったく知りませんでした。い
つか、必ず尋ねてみたいと思います。

雪の多い地方に住んでいますと、冬は日常の暮らしにとって大変です。大町市はさほど豪雪地ではありませんが、それでも平地部でも年に何回か、まとまった雪が降ります。私は雪掻きは決して嫌いではありません、むしろ好きな方ですが、高齢な方にとっては本当に大変だと思います。「雪掻き」とは、前庭や入口の道など、家の周りに積もった雪を、行為の名前と同じ「雪掻き」という
名の道具を使って、隅に退かして片付ける作業です。雪が降った日には、その都度、地面を出しておかなければ後々大変なことになってしまいます。

しかし、一方で冬の大町には、雪はなくてはならない天からの贈り物です。冬に降り積もった雪はアルプスの山々に蓄えられ、少しずつ解けるにつれて徐々に里に豊かな水を供給してくれます。特に春先の農作業に雪解け水は欠かせません。一部は地下水となって、清らかで豊富な湧水をもたらしてくれます。
雪が降るからこその楽しみもあります。スキーやボードは自然の恵みがあればこその冬のスポーツですし、雪の景色を眺めながらの温泉は楽しみが倍増します。

そこに、この雪の結晶を楽しむ喜びも加わります。ネットで雪の結晶を検索しますと、実に様々な姿の結晶があることがわかります。私がこれまで見かけたのはほんの一部に過ぎないことも分かりました。今年の冬は、新たな発見があるでしょうか。私も、雪と氷の研究に生涯を捧げた中谷博士と同じように、雪の空を見上げたいと思います。

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