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雪かき男(平成25年3月)

 3月になって、陽ざしがぐんぐん強くなってくるのを感じます。大町市は、北緯36度30分にあり、この緯度は、ヨーロッパでいえばスペインの最南端ですし、アフリカ大陸北端のアルジェリアと同じですので、もともと陽の光が強いのは当然なのかもしれません。

 ちなみにイギリスのロンドンは、こちらでは北海道のはるか北、カラフトの真ん中あたりになります。ですから欧米の人には、こんなに南に位置する日本で冬のオリンピックができるのが不思議に思えたらしく、私が長野オリンピック組織委員会に勤務していたころ、海外の関係者に会うと、「本当に雪が降るのか?」と尋ねられました。日本列島の特異な地理的環境、つまりシベリア大陸の寒気団から吹き出す猛烈な風と、その寒風にたっぷり水分を供給する日本海により、日本列島に雪と氷がもたらされているメカニズムを説明したことを思い出します。


 今年の冬は、大町では雪の量は平年並みか、やや多い程度でしたが、何回も繰り返し降ったことや気温が低い日が続いたこともあり、ずいぶん雪かきに追われました。前夜寝る前に、天気予報を見て翌日に雪の予報が出ていれば、よし、明日は少し早く起きて雪かきだな、と心構えをします。もちろん、予報ですから、空振りの時もないわけではありません。特にここ大町市は、ちょうど気候区が日本海側と太平洋側の境目にかかっていて、市の北部は多雪地帯、南部は雪が少ない地域となっています。しかし、今年は天気予報そのままに、よく降りました。

  首都圏では、今年大雪に見舞われ、と言っても8センチほどと聞きましたが、普段、雪への備えがないところに降ったために交通がマヒしたりで大変のようでした。雪を片づける道具さえなく、テレビのニュースで、ちり取りで片づけている映像を見て助けに行きたい衝動に駆られました。

    我が家では、朝の雪かき当番は私です。防寒着を上下しっかり身に着け、毛糸の帽子に厚手の手袋という、完全装備の雪かき男と化して庭に下り立ちます。作業は、まず玄関前から始めます。雪が10センチ程度であれば、冬の間、玄関の脇に置いてあるプラスチック製の雪かきで作業ができますが、20センチを超えるとスノーダンプと呼んでいる、ひと回り大きな道具を持ち出すことになります。普通の雪かきが幅45センチほどしかないのに比べ、ダンプの方は60センチ近くもあり、しかも、両手でブルドーザのように、ごいごいと前に押しながら、雪を一気に片づけることができる優れものです。私は、長い間をおいて故郷大町に帰ってきて、初めてこのダンプを購入したものですから、使う時には少しテンションが上がってしまいます。
 

 今年のように気温が低いと、雪はさらさら乾燥していて、少しの雪なら簡単に作業が進みます。このあたりでは、雪を片づける作業も「雪かき」と呼び、その作業に使う道具も「雪かき」と言いますから少しややこしいのですが、道具の「雪かき」は、ホームセンターなどでは「雪はね」という名前で売っているのを目にします。軽い雪の場合には、この「雪はね」という呼び方のように、雪をすくって、跳ね飛ばすようにかくことができますが、水分を含み重い雪の時は大変です。

 玄関先の雪かきが終わると、ひとまずほっとします。訪ねて来る近所の方や知り合いのために、家の周りをきれいにしておくという習慣は、雪降る地方の古くからの共通の意識であり、美徳ともいえると思います。玄関先に続いて家の周りを掻くだけで約30分、体中が汗でびっしょりになります。


 正直に言いますと、私は雪かきが好きです。理由はと言いますと、この作業は仕事の成果が目に見えるからで、雪が片付いたところは間違いなく自分の努力の跡にほかならず、苦労がそのまま形に現れるからです。ちょうど庭の草むしりをするのと同じ感覚で、後ろを振り返り振り返り、出来高を確かめながらやると張り合いが出ます。もっとも雪の方は、片づけても、また降れば努力は元の木阿弥、賽の河原の石積みですが。
 
 克雪という言葉があります。雪国では住みやすい環境を作るために、雪に打ち克つ取り組みに知恵を絞っています。大町市でも、市街地の一部に流雪溝を整備して雪を流す仕組みを作っています。しかし現在、流末の水路構造に制約があり、全域に配備するには至っていません。地下水を利用して道路に流す雪を解かす方法もありますが、気温が低いこの地方では流した水も路面で凍ってしまいます。逆転の発想で、寒さや雪そのものを効率的にエネルギーに変える夢の技術はないものでしょうか。

 私は今のところ体力は何とか現役ですが、高齢の方にはやはり大変な作業だと思います。雪がなければ冬の暮らしも楽になるなと思いながらも、また一方で、雪がなければ冬の楽しみは半減してしまいます。大町では雪や寒さに恵まれ、スキーやスケートが盛んです。風物詩をなっている中綱湖の穴釣りや、雪の中ならではの温かい温泉が楽しめます。雪があってこそ、冬の営みが成り立っていることに感謝するのです。

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