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ホーム お国なまりを乗り越えて(平成23年3月)

お国なまりを乗り越えて(平成23年3月)

 今年も学校では卒業式の季節を迎えました。先日は、私の母校でもある市内の大町高校の卒業式に出席いたしました。卒業生の皆さんの顔には、悩んだり時には挫けそうになったりしながらも、仲間や周囲の方々にも支えられ学業をやり遂げた安堵感と、卒業を機会に新しい道に進む緊張感のようなものが漂い厳粛な式でした。
 式の後、学校長の下坂一俊先生は、卒業生は、受験勉強が進んだここ数か月で、見違えるように表情が変わってきたと話してくれました。郷土の高校卒業生たちが、この先、自らの選んだそれぞれの道で、大いに活躍してくれることを心から願います。

 とうに昔の話ですが、私自身高校を卒業して、大学に進み大都会に住んでいたときのことです。新しい環境でさあ頑張るぞ、という多少の気負いをもって上京してきたものの、田舎から出てきたという緊張感と、言葉の違いに若干の戸惑いを持ちながら暮らしていた思い出があります。

 私は、大学でも弓道部に在籍していたのですが、2年生になったある日のこと、稽古の途中、射た矢を矢場へ取りに行ったときのことです。数人で手分けして矢を拾うため下級生に、「前どを取って!」と言ったところ、みんなは何のことか意味が分からず、気がついた同級生のT君が、「前のほうを取れ!」と言い直してくれたことがあったのです。私はそれまで、「前ど」の「ど」が方言とは気がつかずに普通に使っていたのです。

 「ど」は、古語の「で、て」がなまったものに違いなく、舞台用語でも使う「上手(かみて)、下手(しもて)」のように、方向を示す言葉として現在でも使われています。つまり、「前ど」はT君の言うとおり「前のほう」の意味なのです。ちなみに、広辞苑では、「て【手】」について、1.体の左右の方から出た肢、という真っ当な意味のずっと後のほうに、方向、方角というのが出ています。

 さすがT君は気心の知れた同級生でした。きっと、前々から、私がときどき使う「ど」に気がついていたのでしょう。しかし、ことさらそれを指摘もせずに、受け入れていてくれたのです。ありがたい心配りでした。それからさらに親しさが増したのは言うまでもありません。

 私は、信州の言葉は、比較的標準語に近く、方言の少ない地域だと思っていますが、しかし、方言も時として仲間との信頼の絆になるのです。
 青雲の志を抱いて、この春、新天地を求めて羽ばたく皆さんには、言葉の壁に臆することなく乗り越え、ふるさとのお国なまりを大切にしながら、どんどん新しい人間関係を広げていって欲しいと思います。

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