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民話の宝庫大町(平成21年4月)

 先日、ほのぼのとした集いがありました。「詩と童話で綴る常田富士男のあったか話」です。「口演」と銘打った舞台では、宮沢賢治の有名な「雨ニモマケズ」の詩や、一人ぼっちの子ガエルとゲロ爺の交流を描いた「ゲロゲロ谷の合唱団」などの詩や童話を、常田さんがあの独特の語り口で朗読されました。聞いているうちに、心の中がぽかぽか温まり、しみじみと心地よい時間が流れていきました。

 とりわけ、劇作家別役実の「なにもないねこ」は、一瞬にして不思議な世界に引き込まれました。耳が1つしかない猫がおりましたが、代わりに目が3つあるので誰にも笑われませんでした。目が1つしかない代わりに尻尾が2本ある猫や、おへそが無くて足が5本ある猫など、さまざまな猫がいる中で、何もない猫もおりました。何もない猫は、目も耳も口も尻尾も何もない上に、その代わりに何もなかったので、そんな猫がいることを誰も気づきませんでした。
 そして、その猫が死んで、雨にぬれた地面にその猫の乾いた形が現れたとき、人々は初めて何もない猫がいたことに気づいたのでした・・。 う〜ん・・・。
 この話を自分自身の身に引き比べてみたとき、私たちが「存在する」ということは一体どういうことなのか、目に見えることが存在することなのかを考えさせられる、深く印象的なお話でした。

 さて、俳優、声優として知られる常田さんは、「まんが日本昔ばなし」のナレーションでもおなじみで、私もかれこれ20年以上も前、まだ幼かった子ども達と並んでテレビに向かっていたことを思い出します。昭和50年の放送開始から平成6年まで、952回も続いた人気番組で、最高視聴率はなんと33.6%だったそうです。放送された話が1冊づつ絵本となって出版され、確か全50冊を私も買い、布団の中で眠る前に子ども達に読んで聞かせたものでした。

 実は、大町を中心とした北安曇の地域は、長い歴史と伝統に育まれ、民話、昔話の宝庫なのです。そして、それらの民話が丹念に採録され、わずかこの3年ほどの間に3冊もの民話集が立て続けて出版されています。「語り継ぐ大町の民話(大町民話の里づくりもんぺの会編)」は、380話もが収録されていますし、「あづみ野大町の民話 美麻八坂編(あづみ野児童文学会編)」は、地元の画家荒井泰三さんが挿絵を描かれ、既刊の「大町の民話」の続編として出版されたものです。さらに、「金田国武 民話の世界」は、金田さんが生涯をかけて紡ぎ出した創作民話集で、この地に伝わる伝承の懐かしい世界をみごとに甦らせています。

 大町がすごいと思うのは、民話がたくさん残されていることに加え、それを地域の皆さんが大勢の人々に読んでもらうよう本として纏め、後世にもしっかり引き継いでいこうとしていることです。そして、これらの出版は、郷土の文化を守り育てる地元の書店さんや出版社の相当の熱意とお骨折りがあってのことなのです。

 さらには、民話を単に保存しようとするだけでなく、今日の地域づくりに役立てる活動も活発です。「大町民話の里づくり もんぺの会」は、市内でこうした活動に取り組んでいるグループです。会員の皆さんは、採録した民話を大勢の皆さんに伝えるため、大町温泉郷にある「民話の里おおまち小太郎」と、信濃大町駅前の「もんぺ家」の2か所を拠点に、市民や観光客の皆さんに広める活動を展開しています。「小太郎」では、民話を親しみやすく伝えるために、紙粘土の人形を作り場面を館内に再現しています。

 昨年10月には、大町市文化会館で「日本昔話学会大町大会」が開催されました。地元研究者の相澤亮平先生の講演や仁科路研究会の発表が行われ、続いてこの学会の会長を務められている国学院大の花部英雄先生の司会でシンポジウムが開かれ、全国でも稀な、民話による地域づくりを進めるこの会の活動も報告されました。

 最初の常田さんの話に戻りますが、先日の口演の中で常田さんは、声を出して話す、声の持つ働きということを意識するようお話されました。声という自分で作り出すコミュニケーションの道具をどんどん使って、自分の声の響きをしみじみと味わい、楽しもうという呼びかけです。

 考えてみれば、私たちの人生で使える声の量というものに限界があるわけではありません。いくらでも使える資源として自分の声を出し惜しみせずに、どんどん使っていきませんか。そして、自らの声の響きを楽しんでみましょう。

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