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本の話・私の読書生活(平成20年1月)

 今年のお正月こそは、まとまった時間を使って、日ごろ溜まってしまった本を集中的に読もうと決心していました。ところが6日間が終わってみると、それまでの読みさしを合せ2冊読み終えただけでした。いったい何をしていたのでしょう。

 この1年半の間に、いろいろな方からご本を頂きました。その数を数えてみましたら40冊をゆうに超えていました。この本はきっと役に立つからと頂いた本、生涯を綴った記念の1冊、また、珠玉の作品を綴った歌集や句集。頂いたり、お借りした本はすぐにでも読まなくてはいけないのですが、まだ半分も読み終えていません。このほかに自分で買い込んだ本もありますから、読むのが遅々として進まず、本が積み重なる一方です。
 県の職員をしていたころはサラリーマンの気楽さから、床につく時間など忘れて読み耽ったものです。特に、単身赴任をしていた時期は、空いた時間は読書三昧の、それはもう楽園のようでした。

 実は、私の「読書人生」はスタートが遅かったのです。小学校のころは棒切れを振り回しながら野山を駆け巡っていたものですから、読書の習慣など身に着くわけはありません。ようやく小学校の終わりになって、学校の図書館で借りたのが「トム・ソーヤの冒険」でした。ペンキ塗りをめぐるハックルベリーとの駆け引きにわくわくしながら、机に向かって「読書」した日のことを思い出します。
 こうした幼いころの「食い遅れ」、ならぬ「読み遅れ」が嵩じて、遅れを取り戻すかのように大人になっても乱読が続きました。そして仕事が忙しくなるにつれ、いっそう本を読みたい衝動に駆られるのです。ちょうど学校の試験が近づくと、そこから逃れたいばかりに読書に耽るのと同じです。
 本の対象は、学生時代からもっぱらノンフィクションを読み漁り、社会人になってからも相当の期間続きました。事実を描くノンフィクションの直截さが好きだったのです。フィクションの世界は、確かに虚構の中に普遍の真理を描き出すものではありますが、なんだかストーリーを追いかけていくのが「まどろこしい」と感じていたのです。

 そんなある時、吉川英治の「三国志」に出会って小説の世界の大きな構想力に驚かされ、読書の対象が一気に広がりました。山岡壮八の「徳川家康」、さらには司馬遼太郎の「坂の上の雲」、「菜の花の沖」などにのめり込み、小説の世界に親しむようになったのです。そして、藤沢周平を読み、精神性の深い武士の世界に浸るようになり、気がつけば小説に染まってからずい分経っていました。小学校から高校まで、よく連れ立って図書館や本屋さんへ通った2人の娘たちも、あっという間に大学生となり、故郷を離れていきました。

 15年ほど前でしょうか、40代も半ばになって鮮烈に世に出てきた作家に出会いました。宮城谷昌光です。この遅咲きの作家は、中国古代の金文や甲骨文字を独学で学び、商(殷)、周、春秋戦国など中国の古代に題材を採り、簡潔にして味わい深い歴史小説の新しいジャンルを切り拓いています。私はこの世界にすっかり魅せられ、宮城谷作品に没頭しました。普段、私はどこでも読めるように本は大概文庫本で購入して持ち歩いているのですが、この宮城谷の作品は、一冊一冊が宝のように思え、また、初めは文庫にも収載されていなかったこともあって、単行本で買っていました。おかげで、お宝はずい分の量になってしまいました。引越しをしてみるとよく分かるのですが、本は予想外に嵩張るのです。

 こうした遍歴を経て、この3年ほど読んでいるのが「ローマ人の物語」で、ローマ帝国の発祥からその滅亡までの1300年間の通史です。著者の塩野七生は、お歳からすればすでに老齢に入っている女性作家ですが、昨年秋に文化功労者に選ばれたときに報道された写真では、とてもそんなお歳には見えませんでした。イタリアに在住され、ローマ帝国の言語で、日常語としてはすでに死語となっているラテン語にも精通され、歴史資料の原典にあたって書き進められたと聞いています。単行本は一昨年すでに15巻が完結していますが、私は新潮の文庫版で、ようやく31巻まできたところです。現在までに出版されているのはこの巻までですが、帝国の滅亡まであと10巻以上は出版されるものと思います。これからも楽しみが続きます。

 最近は、本を読むためにまとまった時間がなかなか取れないため、本を読むのはベッドに入ってから眠りに着く前のほんの10分か20分という、さびしい読書生活です。しかし、こうした現状に絶望することなく、これからも寸暇を惜しんで読み続けていきたいと思います。少しは精読を心がけながら。

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