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劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」の大町公演

 劇団四季の大町公演が、8月3日大町市文化会館でありました。大町には、四季演劇資料館や劇団の稽古場、全国の公演での舞台装置一式がすべて保管されている巨大な倉庫群があり、普段から深いご縁があるのです。
 公演に先立ち、キャストの俳優さんたちが市役所にお見えになりました。寅吉爺さん役の吉谷昭雄さん、それに今回の公演では出演はなかったもののペドロ役の菊池正さん、また、大町市のご出身で劇団の役員を務められている浅野貢一さんとのお話に花が咲き、大町の稽古場では、公演先の舞台に合わせた演じ方を合宿しながらリハーサルしたことなどを楽しく聞かせていただきました。
 また、公演の前日には時間を割いて、読み聞かせや合唱などの活動をされている市民の皆さんに、俳優さんたちから発声法を指導していただく機会を作っていただきましたので、劇団四季と大町市との関わりも人と人とのつながりとして、より深めていくことができそうです。

 今回上演された「ユタと不思議な仲間たち」は、田舎に母とともに移り住み同級生のいじめに遭っていたユタが、不思議な仲間「座敷わらし」のペドロ一家と出会い、交流を通じて「生きていくことの大切さ」を教えられ、励まされ、力強く成長していくというものです。劇の内容は実際に舞台をご覧いただき、皆さんご自身で味わっていただくことにしましょう。

 舞台は東北の岩手県。岩手には、民俗学者柳田国男の「遠野物語」のふるさと遠野地方があり、そこではいまだに「かっぱ」が生息し続けているという、伝説の宝庫として有名です。私も学生時代に本を読んで、一度は行ってみたいと思いつつ、いまだに夢を果たしていないのですが、遠野物語にも登場する座敷わらしが、この劇で重要な役割を演じます。尤も、私も、古い民家にひっそりと棲むというこの座敷わらしの身元が、江戸時代、飢饉などで、幼くして命を落とした子ども達の魂だったのだと、改めて思い起こしました。ペドロが絞り出すように歌う「人間になりたかった。」という深い悲しみは、命が軽んぜられている今日、人の胸に強く迫ります。

 それにしても、ますます深刻になっているいじめの問題。人への優しさが叫ばれてはいるものの、どのようにしていじめをなくしていったらよいのか、今何ができるのか、学校現場に限らず、家庭でも地域社会でも悩み、思いあぐねています。相手の痛みを感じる力、その痛みを分かち合う心をどのように人々に、とりわけ子ども達に育んでいったらよいのでしょうか。また、周囲に、勇気づけ、励ましてくれるペドロのような陰の存在はないものでしょうか。

 そして、近年更に大きな社会問題になっている自殺。飢饉の時代、人は人を生かすために命を落としたのです。今日のように、豊かさに溢れ、人の命が大切にされなければならない時代に、人の人としての存在がいとも簡単に否定され、生命を失うようなことがあってはなりません。豊かさの過剰な時代は、命の総質量も過剰になり、粗末に扱われるのでしょうか。

 「ユタ〜」からは、大切な命、生き抜いていくことの大切さを訴えるメッセージがいっそう強く伝わってきます。普段無意識に生きている私たちにとって、自覚的に生きることの大切さを考えさせられました。
 この劇中の歌やセリフには、素朴さ溢れる南部弁が使われ、舞台は方言の持つ温かい情感に満ちていました。この春、横浜のあざみ野にある劇団本部にお伺いしたときに、壁に四季のモットーが掲げられているのが目に留まり、確かその中に、「一つ一つの言葉を大切にしない者は去れ」というのがありました。言葉は相手に意思を伝えるもっとも基礎的なコミュニケーション手段です。これができなくては、観客に演者の意志が伝わるわけはありません。ですから俳優さんたちも、この南部弁の習得にはずいぶん苦労されたことでしょう。

 「ユタ〜」は、上京した折に浜松町での公演を見せていただきました。そのときも、演劇の持つメッセージを伝える力の凄さに圧倒されました。初演されたのは77年のことで、それ以来何回もリメイクや再演を重ねています。今回は89年のリメイク版で90年には大町市でも1度上演されていますが、04年以来3年ぶりの再演とのこと。四季のオリジナルミュージカルの中でも最高傑作の一つと言われているそうです。

 今回の「ユタ〜」の公演では、どの会場でもそうしているのだそうですが、幕が降りると俳優さんたちが一斉に舞台から走り降りて、出口でお客様を笑顔でお送りします。大町公演でも、ロビーで握手を求める人、舞台の感激を話しかける人。2回の公演に大勢来場してくれた子ども達に、ちょっとうれしい夏休みのプレゼントになりました。

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