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ホーム あづみ野雪形まつりと爺が岳の鶏(平成19年6月)

あづみ野雪形まつりと爺が岳の鶏(平成19年6月)

 長い冬の眠りから覚め、北アルプスの雪解けを待って、5月下旬、第6回になる雪形まつりが開かれ、大勢の人が山を眺めながら行く春を楽しみました。まだまだ、たっぷり雪を残した北アルプスの山々の、白く気高い姿は、それを仰ぎ見る人々の心の清らかさをそのまま映しているかのようです。山と、それを眺める人との間に横たわる空気の青い色さえ感じられるようになるのもこの頃からです。北アルプスの麓、大町、北安曇地方では、毎春、山に雪形が現れる頃になると一斉に農作業が始まります。雪形は農作業の時期を知らせる農事暦ともなっているのです。

 私の手元に、「あづみ野雪形ウォッチング」という一枚のDVDがあります。北アルプスの雪形を研究しているグループ「あづみ野雪形研究会」の渡辺逸雄さんからいただいたもので、昨年完成したときにはずいぶん話題になりましたので、ご記憶の方も多いと思います。渡辺さんによりますと、この完成の裏には、取材、製作に深く関わり、その上、自らナレーションまで担当されたアルプスケーブルビジョンの丸山慶子アナのご奮闘があったそうです。
 さて、雪形でよく知られているのは、まず標高2,889メートルの鹿島槍の「獅子と鶴」です。山容の中央に、北に向かって首をすっくと伸ばし今にも飛び立とうとする鶴と、それに飛び掛るかのように斜面を駆け下る獅子の姿が浮き出ています。この雪形は、急峻な岩肌で雪が付きにくいため、冬の間でも黒い姿を見ることができます。
 私が初めて雪形に興味を抱いたのは高校の頃でした。確か、大町高校に入学早々の5月、春の野球の応援に行く松本の野球場への道すがら、ガイドさんがバスの車窓から新緑の木々越しに見える鹿島槍の、この雪形を説明してくれたのです。今となっては懐かしい40年も前の思い出です。

 少し北に目を転じますと、白馬岳があります。ここの雪形「代掻き馬」は夙に有名で、全国に知られるこの山の名前の由来となっています。更にその北隣にある白馬乗鞍岳の白い「鶏」も、やや長めで立派な尾を持つ、なかなか写実的な鶏です。
 大町市街の真西に聳え立つ爺が岳は、その名の謂れのとおり「種まき爺さん」が出ます。3つの峰からなる爺が岳の南峰の稜線近くに「爺さん」が二人現れます。向かって右側の爺さんは、腰蓑を着けて肩に鍬を担いだ姿で、やや小ぶりです。これに対して、左側の爺さんは少し大柄で、日当たりが良い分、時とともにどんどん大きく成長していきます。
 実は、余り知られてはいないのですが、私はこの「種まき爺さん」の近くにある、もうひとつの雪形が一番好きです。それは、この大きな爺さんのすぐ左手、南の隣に現れる「鶏」の雪形です。南峰の山頂から伸びる南尾根の稜線のすぐ下に、ずんぐりと質量感溢れる黒い姿で、なんとも言えない愛嬌のある形です。寒い冬の日にふっくらと羽毛を立ててしゃがんでいる姿にも見えます。今年は、自宅の窓や、すぐ麓の蓮華大橋のあたりから何度も眺めたものでした。

 雪形まつりが終わって10日ほど過ぎ、初夏の訪れとともに、ここ大町の里から見える雪形もだいぶ姿が変わってきました。雪解けが進み、すでに形が崩れてしまっているものもあります。見上げると、私の好きな爺が岳の「鶏」もすっかり太ってしまい、もはや飛び立つこともかなわぬ、ずんぐりむっくりの「ぼた餅」みたいになってしまいました。
 人の心の疲れを癒してくれるものはいろいろあるでしょう。美しく豊かな自然に満ち溢れたここ大町では、北アルプスの山々です。そして春から初夏にかけては、間違いなく雪形です。私にとって、郷愁でもある北アルプスの雪形を目近に仰ぎ見るたびに、心休まる思いがします。
 今からまた、来年の雪形の季節を心待ちにしています。

6月8日 市長室にて

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